鑑賞眼

ミュージカル「四月は君の嘘」 世界的クリエーターの力、まざまざと 

心を通わせていく公生(木村達成)とかをり(生田絵梨花)=東宝演劇部提供
心を通わせていく公生(木村達成)とかをり(生田絵梨花)=東宝演劇部提供

世界的クリエーターの力をまざまざと見せつけられた。「ジキル&ハイド」「アリス・イン・ワンダーランド」などのヒット作で知られるフランク・ワイルドホーンが音楽を担当した青春物語は、コロナ禍を経て、なぜ物語をミュージカルで見せるのかという問いに答えるハイレベルな作品に仕上がった。

近年、日本発の高品質なミュージカル作品が多く作られている。現在上演中のものだけでも、「バケモノの子」(劇団四季)や「るろうに剣心」など、日本の漫画やアニメを原作にした大作が相次ぐ。この「四月は君の嘘」も原作は新川直司の少年漫画で、平成26年にはテレビアニメにもなった。

高校生の元天才ピアニスト、有馬公生(小関裕太、木村達成のWキャスト)は、厳しく指導してくれた母の死をきっかけに自分が弾くピアノの音が聞こえなくなり、音楽から離れている。幼なじみの澤部椿(唯月ふうか)の紹介で、同い年のバイオリニスト、宮園かをり(生田絵梨花)に出会いその奔放な演奏にひかれるが、かをりは同級生の渡亮太(水田航生、寺西拓人のWキャスト)に思いを寄せている。

「音楽」を主軸に、友情と恋愛、愛する人との別れを経て若者が成長していく物語は、青春小説の王道だ。ある意味予想しやすい展開を、こうもドラマチックに、こうも美しくミュージカル化したクリエーターチームの手腕には、驚かされるばかりだ。

例えば、芝居と歌の自然な継ぎ目。クラシック音楽の一節を組み込ませた印象的な楽曲の数々。心情に寄り添う転調の使い方。同じシーンをまったく別の景色にする効果的なリプライズ。同じ曲を違う人物が歌うことで普遍性を感じさせる工夫。ワイルドホーンは「登場人物の喜びや恐れ、愛、涙を表現するのにもっともふさわしい方法が音楽」と語るが、その言葉通り、音楽の力が作品を支える。

ボールを使わないサッカーの試合、バイオリンのない演奏会など、舞台ならではの表現もおもしろい。セットを大きく変えるのでなく、洗練された振り付けで状況を伝えた。それに応えるアンサンブルのレベルも高い。

沈んでいた日常が輝き始めるときの「色」や「光」の使い方、車いすやメトロノームといったモチーフの出し方も巧みだ。主人公を追い詰める正確なメトロノームの音は、人生の残り時間が確実に進んでいく残酷なカウントダウンでもある。母親の存在感を示す「車いす」が、絶望の象徴から希望の象徴になっていく過程には、分かっていても思わず涙してしまう。

作中の人物と同年代の、ミュージカルに縁のない人たちに特に見てほしい。

29日まで、東京・日比谷の日生劇場。問い合わせは、03・3201・7777。群馬、愛知、兵庫、富山、福岡公演あり。(道丸摩耶)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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