主張

謎の4300万円 金の流れに疑念を残すな

20日、自宅の捜索を終えた捜査車両
20日、自宅の捜索を終えた捜査車両

社会の公平、公正を保つために、金の流れには高度な透明性が求められる。動きをたどれぬ、ブラックボックスの存在は許されない。

山口県阿武町の誤給付問題で、町が誤って住民に振り込んだ4630万円のうち、約9割にあたる約4299万円が返金された。ほとんどは、電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された住民が振り替えた決済代行業者3社からの返金である。

容疑者には税金の滞納があり、町は国税徴収法に基づいて業者などに滞納分の取り立てを行ったところ、滞納分を大きく上回る金額が返納され、驚いたのだという。ここに新たな疑念が生じた。

返金された金が誰のものか、判然としないことだ。容疑者の金であれば「インターネットカジノで全額を使った」とする供述が虚偽だったことになり、業者の金であれば税法上の問題が残る。

大金の正体が不明である以上、さまざまな臆測ができる。

容疑者は本当はカジノに賭けていなかった。もしくは勝っていた。依頼を受けた業者は実際には海外カジノに送金せず、ノミ行為を行っていた。容疑者の金は業者に残っていなかったが、賭博など他の犯罪行為との関わりを探られないよう事態を収束させようと、自腹で立て替えた…。

金の流れ、趣旨が不明である以上、こうしたさまざまな臆測を否定する材料はない。

海外カジノへの送金と知って代行していれば賭博罪の幇助(ほうじょ)や、常習的に組織で関与していれば賭博開帳図利の幇助に問われる可能性もある。

逮捕容疑の電子計算機使用詐欺を知りながら資金を持ち続ける、あるいは届け出を怠れば、マネーロンダリング(資金洗浄)を防止する犯罪収益移転防止法違反に問われる可能性もあった。

業者側が返金の意図を明確にしない限り、何か後ろ暗いところがあるのではないかとの疑念からは逃れられない。

阿武町の花田憲彦町長は「解明は町の力ではおそらくできず、警察の捜査で一定程度明らかになると思う」と話している。

発端は町の誤給付であり、稚拙な事後処理である。町が猛省すべきは当然だが、背後の闇に光を当てるには司法・税務当局の力が必要だ。適用可能な法規を駆使して全容を解明してほしい。

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