「間違った人間に銃を渡さないで」 米・乱射 移民の街を襲った悲劇 規制不備に憤る父母ら

25日、米テキサス州ユバルディのロブ小学校前で報道陣を前に悲しみを訴えるヒスパニック系の住民(渡辺浩生撮影)
25日、米テキサス州ユバルディのロブ小学校前で報道陣を前に悲しみを訴えるヒスパニック系の住民(渡辺浩生撮影)

【ユバルディ(米テキサス州南部)=渡辺浩生】18歳の男による銃乱射で児童19人、教諭2人が殺害された米テキサス州のユバルディに25日入った。普段はお互いを誰もが知り、休日は教会に通いバーベキューを楽しむのどかなヒスパニック(中南米系)中心の街だ。乱射のあったロブ小学校前には、花束をもった父母らが足を運び、子供たちの未来を奪った犯人とその背後に潜む銃規制の不備に強い憤りを表していた。

「わたしのいとこが娘を失いました」。テディー・ロマスさんは語る。この街に両親の世代がメキシコから移住して生まれ育った。子供たちの遺体が安置される市民会館に前夜訪れたが、子供の写真をもって遺体を探す母親の姿を見たという。「あまりにむごい光景だった」と表情を曇らせた。

メキシコ国境から約90キロ、ユバルディは19世紀にテキサスの大平原を開拓した街で、現在の人口約1万5千人の8割は中南米系だ。平屋の家並みは前庭に花や十字架が飾られる。「移民の家族が2世代、3世代と同じ家に暮らし、みなお互いを知る平穏な共同体です」。

数十人の報道陣が集まるロブ小前。母親と一緒に花束をもって訪れたエンジェリ・ゴメスさんは語る。


ゴメスさんの9歳の長男と8歳の長女は無事だったがママ友が8歳の娘を失った。「子供が一緒のサッカーチームに入り、フェイスブックを交換する。とてもすてきな娘を失い、ただ彼女の気持ちがどうなのか、そればかり考えている…」

夫の兄弟が9歳の子を亡くし、花束を手に息子と訪れたクリステラ・エリアさんは「ただ心が砕けた思いです。美しい街に起きた悲劇に世界の人々は同情と関心を寄せてほしい」と語った。

州当局者によると、犯人の男は18歳になって銃弾や半自動ライフルを地元の銃器店で合法的に購入したという。だがエリアさんは、「間違った人間には銃を渡さないで。政治は行動を起こしてほしい」と訴えた。

銃の保有・携帯を憲法で認める米国でもテキサス州は「最も銃器に寛容な州のひとつ」とされる。

しかし、2019年には同州エルパソのショッピングセンターで白人の男がヒスパニックの買い物客ら22人を殺害する事件も起きた。同事件を取材したサンアントニオのテレビ局記者、ニコル・チャイスさんは「銃は生活の一部。私は持たないが、権利は尊重する」と語る。

地元の高校での記者会見で共和党のアボット知事は学校施設などの安全対策強化を訴えたが、殺傷力の強い銃の保持への規制強化には踏み込まなかった。会見場にいた、ユバルディを含むサンアントニオ教区のムスタボ・ガルシアス大司教は本紙に「銃規制は人の生死に結びついている。政治は人間の尊厳を無視してきたと言わざるを得ない」と批判した。

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