【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮は25日、バイデン米大統領が日韓歴訪を終えた翌日というタイミングで弾道ミサイル3発を立て続けに発射した。米韓、日米首脳会談での日米韓の出方を見定めた上で軍事的挑発に出た形だ。北朝鮮は新たなミサイル発射や核実験の強行をちらつかせて、引き続き日米韓に圧力をかけてくるとみられる。
北朝鮮がミサイル発射を準備する動きは、バイデン氏が20日に日韓歴訪を開始する前から観測されていた。19日に韓国の情報機関から報告を受けた韓国の国会議員は「どの時点で発射してもおかしくない」と説明していた。
だが、北朝鮮が発射のタイミングに選んだのは、バイデン氏の歴訪直前や歴訪最中ではなく、米韓、日米首脳会談を終え、24日に日本を離れた後だった。
23日の日米首脳会談では、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応するため、日米韓が緊密に連携する方針を確認した。それに先立つ21日の米韓首脳会談では、バイデン氏が韓国への「核の傘」を含む抑止力強化を約束。米韓合同軍事演習の拡大に向けた協議開始でも合意した。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「戦闘機やミサイルを含む戦略兵器の展開も議論した」と明らかにした。
米韓演習や米戦略兵器の韓国展開は、北朝鮮が強く反発し、やめるよう繰り返し求めてきたものだ。
北朝鮮側には、米韓が先に対北「敵視政策」の強化を打ち出したと主張し、米韓に責任を転嫁する意図もありそうだ。自国の核・ミサイル開発について、米国の「敵視政策」に対抗した「自衛的な措置」と強弁してきた北朝鮮は今後、軍備増強を一層加速させる可能性がある。韓国当局は、北朝鮮が北東部、豊渓里(プンゲリ)の核実験場で7回目の核実験の準備をほぼ完了した状態とみている。
北朝鮮国内では4月末以降、新型コロナウイルス感染が疑われる発熱患者の急増が続くが、核・ミサイル開発はコロナ拡大に左右されず、計画通り進められると内外に誇示する狙いもあるとみられる。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記はコロナの初感染例を公表した12日の会議で「国防の前線を一層固めて防疫大戦の勝利を保証するよう」指示していた。