神戸市須磨区で平成9年、小学生5人が相次いで襲われ、2人が殺害された神戸連続児童殺傷事件から今年で丸25年。14歳の凶行が社会に与えた衝撃は四半世紀を経ても人々の脳裏に焼き付く。捜査を指揮し、回顧録「二本の棘(とげ)」(角川書店)を今春出版した当時の兵庫県警捜査1課長、山下征士(せいし)さん(83)は、事件の「兆し」を目にしながら被害者を守れなかった無念さ、遺族への申し訳なさを今も胸に抱える。
平成9年5月27日の午前6時40分過ぎ、枕元の電話が鳴った。中学校の校門に子供の遺体の一部が置かれているという捜査員からの報告だった。ゆっくりと丁寧な口調は、事件の重大さを伝えるには十分だった。
《「何かの見間違いということはないか。マネキンとか、人形とか…」「その可能性はありません」》