投資と節約で1億円貯蓄 47歳会社員が「FIRE」を達成した極意

経済的自立と早期退職を実現する「FIRE」(Financial Independence Retire Early、ファイア)という生き方が若い世代を中心に広がりつつある。経済的に自立し、早期退職の達成を意味する造語で、お金のために働く生活からの解放を目指すとの考え方だ。会社員として働きながら支出を切り詰め、浮いた資金を株式投資に回して1億円以上の資産を形成した人にFIRE達成の「極意」を聞いた。

金融広報中央委員会(事務局・日銀)が発表した令和3年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯が保有する預貯金や有価証券など金融資産の平均額は1563万円。ただ、実態により近いとされる中央値(資産額を順番に並べて真ん中の値)は450万円だった。

老後30年間で約2千万円が不足する-。3年前に公表された金融庁金融審議会の報告書が物議を醸した。いわゆる「老後2千万円問題」だ。25年間働いた会社を47歳で早期退職した投資家の桶井道さん(48)は「1日500円節約するだけで『老後2千万円問題』は解決できる計算」という。桶井さんは「おけいどん」として、投資などについて伝えている。

1日500円の節約で1カ月1万5千円。その1万5千円を投資信託で毎月積み立て、運用益を再投資していくと、利回り5%として「会社員生活の43年間で約2700万円になる」計算だという。時間を味方につける長期投資の複利効果は想像以上に大きい。

とはいえ、投資にリスクはつきものだ。桶井さんは、米国市場を代表する500銘柄で構成する株価指数「S&P500」など、値動きに連動した投資信託を薦める。複数の銘柄に広範な分散投資ができるためだ。毎月一定額を定期的に積み立て購入することで、投資タイミングによるリスクも軽減できるという。

FIREを達成できる貯蓄額はそれぞれだが、目安は資産1億円とされる。どう資産形成すればよいか。

桶井さんは年収400万円台の「普通の会社員」だった。営業成績がトップとなり、表彰を受けたこともあったが、賞与や昇給に反映されることはなかった。会社に対する意識も変化。「昇給を目指すより投資をした方がお金を手にできるのでは」と考えたという。

25歳から株式投資を始め、資金を捻出するために先取り貯金や節約を徹底した。マイボトルを持ち歩き、つい余分なものを買いがちなコンビニエンスストアもなるべく利用しない。「ケチは財を成す。年間100万円の貯蓄も難しくない」。節約で毎月8万3千円を捻出、全額を積み立て投資に回し、36年間継続できれば、1億円の資産を形成できる可能性は高いという。

しかし、無理は禁物だ。「たまには贅沢(ぜいたく)を思う存分堪能することも必要。その方が満足感が長続きし、資産形成への意欲もさらに生まれる」と極意を明かす。

桶井さんは43歳で時短勤務を選択した。生活費を資産運用による収入で賄い不足分を労働収入で得る「サイドFIRE」という考え方だ。セミリタイアで母親の介護を経験した。そして47歳で1億円の貯蓄を達成し、早期退職。経験をまとめた「今日からFIRE!おけいどん式 40代でも遅くない退職準備&資産形成術」(宝島社)を上梓(じょうし)した。ブログなどで情報発信するほか、難病を患う父親の介助や「子ども食堂」でボランティア活動をしている。

「定年まで会社で働くだけが人生ではない。やりたいことへの挑戦や介護のためにもFIREをしてよかった。経済的自由が選択肢を生むと思う」

(大竹直樹)

会員限定記事会員サービス詳細