海外に住む日本人の有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票できないことの違憲性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、1審東京地裁、2審東京高裁に続き、在外投票を全く認めていない現行の国民審査法は「違憲」とする判断を下した。国会が立法措置を怠ったことも認め、国による賠償を命じたほか、次回審査で投票できないことも違法とした。裁判官15人の全員一致の意見。
最高裁が法律を違憲としたのは、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定を巡る平成27年の判決以来で、11例目。立法の不作為による国家賠償を認めたのは、国政選挙の在外投票を巡る17年の判決以来、2例目となる。
今回の訴訟の原告は、映画監督の想田和弘さん(51)ら5人。平成29年の衆院選と同時に行われた国民審査の際、在外邦人有権者に審査用紙が配られず、投票できなかったのは違憲だとして提訴した。
令和元年5月の東京地裁判決は、「憲法は国民審査で投票する機会を平等に保障しており、国民の審査権、行使を制限することは原則として許されない」とし、国に賠償を命じた。
東京高裁も2年6月、1審に続き違憲と判断。海外居住を理由に、次回の国民審査に参加できないことも違法だと認めた一方、賠償請求については棄却した。
国民審査は、計15人(長官1人、判事14人)いる最高裁裁判官が職務にふさわしいかどうか、憲法に基づき有権者の投票による審査を受ける制度。任命後初めての衆院選に合わせて行われ、その後は10年が経過した最初の衆院選で、再び審査を受ける。
辞めさせたい裁判官の欄に×印を記入し、有効投票の過半数に達すると罷免されるが、昭和24年の第1回以来、罷免された例はない。今回の訴訟の対象となった平成29年の審査では、15人中7人の裁判官が対象となり、不信任率は7・5~8・6%だった。