朝晴れエッセー

新聞少女・5月25日

肌寒い雨の朝、玄関を開けて新聞をとる。ぬれないように丁寧にビニールでくるんである。心遣いがありがたい。雨の日の配達は大変だ。どんな人が配っているのだろう。私はついつい思ってしまう。

中学2年になった春、小さな村の新聞販売店を営む人と母は子連れ再婚した。以来高校を卒業するまで、学校に行く前に私は新聞少女になった。

新聞は朝一番のバスに乗ってくるのでバス停まで取りに行くのである。バスが着くと車掌さんが降ろす。それを父が私の背中の「負子(おいこ)」に乗せる。ずしりと重い‼ 私は自分の身長が伸びなかったのは、毎日、新聞を背負ったせいだとこの頃は思っていた。

村に一つしかない販売店は全社の新聞を扱っていた。家に着くと配る順番に新聞を重ね、脇にかかえて歩いて配るのである。雨の日はぬれないように玄関の小さな隙間を見つけて中へ押し込んだ。

学校へ行く時間があるのでなるべく近道を選ぶ。そうすると薄暗いのにお墓の前を通らなければならない。そのときばかりは意を決して一目散に、ひたすら前を見て走り抜けるのだった。

夜遅くまで試験勉強した日も、ものもらいで顔の半分が腫れた日も休まなかった。

この丈夫な足は新聞配達のおかげかもと思う。今日も明日も、10年先も卓球の球を追って走り回るのが私のささやかな楽しみである。


三原幸枝(81) 東京都調布市

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