【北京=三塚聖平】中国の王毅(おう・き)国務委員兼外相は23日、訪中しているバチェレ国連人権高等弁務官と広東省広州で会談した。中国外務省によると、王氏は「人権問題の政治化、武器化」に反対するとの立場を表明した。少数民族ウイグル族への人権侵害が指摘されている新疆(しんきょう)ウイグル自治区をバチェレ氏が訪問する前に会談し、中国側の立場を正当化してクギを刺した形だ。
王氏は、米欧がウイグル族への弾圧を批判していることを念頭に、「一部の国と反中勢力が偽情報を躍起になってまき散らし、中国を攻撃、中傷している」と反発。中国は「少数民族の権利を守ることを重要視してきた」と主張した。バチェレ氏に「今回の訪問を通じて事実や真相を話し、デマや虚言を自滅させるよう望む」と呼び掛けた。
国連人権高等弁務官事務所は23日にツイッターで、バチェレ氏と王氏の会談写真とともに「われわれは敏感で重要な人権問題について議論する。今回の訪問が、中国と世界の人権の推進に向けた連携を促進することを望む」と投稿。バチェレ氏は28日までの滞在中に、同自治区のカシュガルやウルムチを訪問する。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは23日に発表した声明で、バチェレ氏訪問について「新疆の人権侵害に対処する重要な機会だが、真実を隠そうとする中国政府との戦いとなる」と指摘。「国連は露骨なプロパガンダ(政治宣伝)を支えるのに使われることを阻止しなければならない」と強調した。