【北京=三塚聖平】日本で首脳会合が開かれた日米豪印の協力枠組み「クアッド」を、中国は「小派閥を作り陣営対立を扇動している」と非難した。バイデン米政権がインド太平洋地域で関与を強化しているのに対し、クアッドなどが北大西洋条約機構(NATO)のような強固な同盟に成長することを警戒。今後、中国は自国の影響圏拡大を急ぐとみられる。
中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は24日の記者会見で、クアッドの共同声明に中国の東・南シナ海での一方的な現状変更の試みを念頭に置いた文言が入ったことに対し、「色眼鏡をかけて根拠のない非難を行わないようお願いしたい」と反発した。
中国共産党機関紙、人民日報(海外版)は24日付で、クアッドなどを「衝突と対立を作り出し、米国の覇権に奉仕している」と批判。中国国際問題研究院の楊希雨研究員は同紙に「米国は、アジア太平洋の同盟国を組織しようとたくらんでいる。欧州のような完全な同盟システムを形成できれば、アジア太平洋版の『ミニNATO』を構築する」との見方を示した。
中国が意識するのはウクライナ問題だ。当初、ロシアがウクライナに軍事侵攻しても米欧各国は結束できないとみられていたが、実際には一致して対露制裁やウクライナへの支援に動いた。将来の台湾統一を目指す中国としては、米主導の枠組みに対抗する態勢の整備は喫緊の課題であり、既に対応を進めている。
中国外務省は24日、王毅(おう・き)国務委員兼外相が26日から6月4日の日程でソロモン諸島など太平洋の7の島嶼国と東ティモールを訪問すると発表。中国とソロモンは安全保障協力に関する協定を4月に結んでおり、訪問を通じて協定に基づく具体策などを協議して影響力を強める。同協定は、クアッド参加国のオーストラリアなどが問題視している。
今月19日には中露印など新興5カ国(BRICS)がオンライン形式で外相会合を開き、王氏がBRICSの拡大に向けた取り組みを提案。「BRICSの代表性と影響力を高めるのに有益だ」と強調した。