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au、全国で通信障害

一筆多論

データを使えない日本 佐藤好美

新型コロナウイルスのワクチンを接種した後、どのくらいたつと感染しやすくなるのか。接種した人はどのくらい重症化せずに済むのか。

こういう疑問にデータで答えるのは、実は容易でない。今回のパンデミック(世界的大流行)では「できる国」と「できない国」の違いを見せつけられた。

抜きんでていたのは、イスラエルや英国である。

イスラエルのすごさは言うまでもない。米ファイザー社のメッセンジャーRNAワクチンの評価を不動にしたのはイスラエルだ。約4万人の治験データを同国内の300万人規模のビッグデータで裏付けた。

実社会で得るデータのことを「リアル・ワールド・データ」という。数が多いから細かな分析ができる。研究で分からなかったことが分かることもしばしばである。

英国のデータ活用も秀逸だ。医療を国営のナショナル・ヘルス・サービス(NHS)が提供しており、データが一元化されていることが大きい。ワクチンの接種情報とも連結できるから、例えば接種済みの人を追跡し、新型コロナ感染の有無や時期を多数のデータで分析できる。それが、ワクチン政策の根拠にもなる。

国民に確かな医療を提供するために欠かせないのが、データなのである。

しかし、日本のデータ利用は〝数〟周回遅れだ。医療情報は通常、医療機関や健保組合などにあり、ワクチンの接種情報は自治体にある。両者を連結できないので個人単位で追跡できない。新型コロナの感染者情報を管理するシステム「HER―SYS(ハーシス)」も個々のワクチン接種記録とつなげて分析することは困難だ。

だから、ワクチン政策はデータ先進国の分析が頼り。とはいえ、人種が違えば結果が違うこともあるから、日本の研究者は手作業に近い方法でデータを取って、海外の結果と齟齬(そご)のないことを確認している。いったい、データ取得で疲弊させていてよいのか。

国民の利便性にも欠ける。自治体にはワクチン接種の情報はあっても住民の医療情報はない。だから、4回目のワクチン接種で基礎疾患のある人に接種券を送りたくても、だれが対象者か分からない。

データの散逸は、新型コロナで露呈した日本の医療政策の致命的な欠陥の一つだ。国民に根拠のある医療と健康を提供するための基盤がもろいのである。

自民党の健康・医療情報システム推進合同プロジェクトチームは今月13日、医療情報の「共通の場」を創設する提言をまとめた。診療報酬や介護報酬、電子カルテ情報をはじめ、ワクチンや自治体検診情報などの共有を挙げている。

データ活用が遅れたのは、調整の難しい業務を先送りした行政の怠慢もあるが、国民自身がプライバシーの観点でデータ活用に否定的だったことも大きい。

プライバシー保護は不可欠だが、だからデータが使えないのでは本末転倒ではないか。科学的根拠に無関心では、この先、国民の安全を守れるとも思えない。

散らばっているデータを集めて使えるようにしなければいけない。データを利用可能にすることは、国民に根拠のある医療を提供するだけでなく、新たな知見で次世代の健康と安全を守ることにもなるのだ。(論説委員)

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