日米首脳、台湾ゆかりの場所で会談 台湾有事へ結束確認

夕食会を前に、バイデン米大統領(中央)を出迎える岸田文雄首相と裕子夫人=23日午後7時11分、東京都港区の八芳園(代表撮影)
夕食会を前に、バイデン米大統領(中央)を出迎える岸田文雄首相と裕子夫人=23日午後7時11分、東京都港区の八芳園(代表撮影)

岸田文雄首相とバイデン米大統領は23日の会談で、台湾有事を念頭に日米同盟の結束を確認した。ロシアによるウクライナ侵攻で国際秩序が揺らぐ中、中国が台湾の武力統一に踏み切る懸念が強まっている。首相がバイデン氏との信頼関係を構築するために選んだのも台湾とゆかりのある場所だった。

「台湾有事にならないよう、中国にしっかりとしたメッセージを出していかなくてはならない」

バイデン氏は会談で首相に語りかけた。

日米がロシアに厳しい姿勢で臨むことが中国の野心を防ぐことにつながるとの考えがある。首相も同意し、日本の防衛費増額を伝えたほか、米国が核兵器を含む戦力で日本を防衛する拡大抑止を重ねて求めた。

バイデン氏は会談後の記者会見で、中国が台湾を攻撃した場合の軍事的関与を明言した。ホワイトハウス当局者は台湾を巡る政策に変更はないと〝火消し〟したが、外務省幹部は「本当に失言なのか…」と打ち明ける。

共同声明も「台湾海峡の平和と安定の重要性」は、「国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である」とし、これまでより踏み込んだ表現になった。

首相にとって、バイデン氏と時間をとって会談するのは今回が初めてだ。首相は周囲に「日米関係を発展させるためにこの機会を生かさなければならない」と語っていた。

首相がバイデン氏との夕食会の場所に選んだ東京・白金台の八芳園は、中国の辛亥革命を指導し、台湾で「国父」と敬愛される革命家、孫文(1866~1925年)が亡命中に身を寄せた場所でもある。

当時、孫文の活動を日本の経済人らが資金面で支えるなど、日本は中国や台湾の発展を後押しした。そして現在、「アジアの代表」(首相)として、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)などと欧米を橋渡しする役割を担っている。

「今はウクライナ危機に目が向いているが、日米ともに一番の脅威は中国だ」

政府関係者は指摘する。23日の会談では経済安全保障や米主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」での協力も確認し、軍事・経済の両面で覇権を目指す中国に対抗する姿勢を鮮明にした。

「アジアで平和と安定が守られるために、日米同盟を強いものにしていかなくてはならない」

共同記者会見で台湾有事について問われた首相は力を込めた。(永原慎吾)

会員限定記事会員サービス詳細