東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催中の展覧会「ボテロ展 ふくよかな魔法」。作品の魅力や楽しみ方について、同ミュージアム学芸員の岡田由里さんに解説していただきます。
フェルナンド・ボテロのルーツ
フェルナンド・ボテロは南米コロンビア出身、90歳を迎えた現在もなお精力的に活動を続ける芸術家です。対象をふくよかに表現する画法からコミカルな印象を持たれがちですが、実は20代の初めに2年間イタリアのフィレンツェに滞在し、ルネサンス美術の技法を身につけます。
ボテロをフィレンツェに向かわせたのは、ピエロ・デラ・フランチェスカです。本屋で手にした書物でその作品を目にして以来、ボテロはこのルネサンスの巨匠を高く評価しています。当初は名画を模写することで技法の習得に努めますが、次第に同じテーマを用いつつ、自分なりの独自の表現方法を追求します。
ヨーロッパから戻ったボテロはメキシコに移住します。そこで、自身のルーツであるコロンビア、その文化的アイデンティティが作品には不可欠だと悟り、以後コロンビアの日常生活を題材に取り入れます。また、南米を思わせる鮮やかな色遣いにもご注目ください。
ふくよかなボテロ様式確立のきっかけは、メキシコ在住の1956年、ボテロ24歳の時に訪れます。マンドリンのサウンドホールを思いきり小さく描いてみたところ、急にマンドリンが爆発したかのように膨らんで見えました。この時、大きさを感知するためにある部分を小さく描くという、コントラストによるデフォルメの方法を会得します。本展ではマンドリンを描いた作品の代わりに、ギターの描写でお楽しみください。
本作はボテロのふくよかな様式が非常に明快な一例です。バレリーナの太腿は片足だけでもウエストほどの大きさに膨張しています。それでいて、トウシューズを履いたつま先は小さな一点で描かれ、身体全体を支えています。このコントラストこそが、ボテロ特有のデフォルメ表現なのです。
他にもここでは紹介しきれないボテロの魅力満載の絵画作品計70点と、東京会場では特別に彫刻作品1点を出展中です。この機会に是非ボテロワールドをご堪能ください。
(Bunkamura ザ・ミュージアム学芸員 岡田由里)
《開催概要》
「ボテロ展 ふくよかな魔法」
【会期】2022年4月29日(金・祝)~2022年7月3日(日)
【会場】Bunkamura ザ・ミュージアム
【主催】Bunkamura、日本テレビ放送網、日テレ アックスオン
【公式HP】 https://www.ntv.co.jp/botero2022/
※会期中すべての土日祝は事前に【オンラインによる入館日時予約】が必要です。