PL魂を次世代に 名将・中村順司が球界に残すDNA

第67回全国高校野球選手権決勝の宇部商戦で、にこやかな表情をみせるPL学園の中村順司監督(左)。右端は清原和博内野手=1985年8月21日、甲子園
第67回全国高校野球選手権決勝の宇部商戦で、にこやかな表情をみせるPL学園の中村順司監督(左)。右端は清原和博内野手=1985年8月21日、甲子園

プロ野球の「セ・パ交流戦2022」開幕戦に、高校野球で一時代を築いた名将が花を添える。PL学園(大阪)を率い、春夏6度の全国制覇を成し遂げた中村順司さん(75)。5月24日の中日-西武戦(バンテリンドーム)の始球式に登場し、中日の立浪和義監督、西武の松井稼頭央ヘッドコーチら教え子が見守る中、大役を務める。かつての名門も2016年に休部し、球界で今もプレーする選手は数えるほどになった。両軍の首脳陣になったまな弟子たちに元気な姿を披露する中村さんは「今後は選手ではなく、PLの教えを実践する指導者として球界に貢献してほしい」と語る。

守りを重視する野球

中村さんは1980年から98年まで監督を務め、PL学園の黄金時代を築いた。チームを春夏合わせて16度、甲子園に導き、6度の全国制覇。多くの教え子がプロ野球に進んだ。

立浪監督は87年に春夏連覇したときの主将。ドラフト1位で中日に入団し、22年の現役生活で通算2480安打を記録した。今季から中日を率いる姿に、中村さんは「投手を含めた守りを重視し、点をやらないPLの野球を貫いている」と話す。

今季、立浪監督が厳しさを前面に出した一幕があった。5月4日のDeNA戦(横浜)。極度の打撃不振の上、守りでもミスが出た遊撃手の京田陽太を試合中に名古屋へ帰し、翌日に登録を抹消したのだ。

野球殿堂入りを果たし、PL学園高時代の恩師、中村順司氏と握手する立浪和義氏=2019年1月、東京都文京区の野球殿堂博物館(大橋純人撮影)
野球殿堂入りを果たし、PL学園高時代の恩師、中村順司氏と握手する立浪和義氏=2019年1月、東京都文京区の野球殿堂博物館(大橋純人撮影)

中村さんは「厳しいところはきちっと厳しくしている」とした上で、立浪監督とはPL時代からの盟友である片岡篤史2軍監督の存在を挙げ「おそらく片岡に『2軍へ落とすので気をつけてやってくれ』などと話し、連携しているのでは」と推し量った。

現役は日米で3人に

PL学園出身のプロ野球選手は、東洋大を経て2019年にオリックスに入団した中川圭太まで82人。1977年度から25年連続で各年代からプロ選手を輩出し、日本プロ野球名球会の会員には、立浪監督、45歳で球界最年長の福留孝介(中日)、メジャーでも活躍した西武の松井ヘッドコーチのほか、加藤秀司(元南海など)、新井宏昌(元近鉄など)、清原和博(元オリックスなど)、宮本慎也(元ヤクルト)の7人が名を連ねる。メジャーリーガーも、現役の前田健太(ツインズ)、松井稼、福留、桑田真澄(元巨人=現巨人投手チーフコーチ)の4人を輩出した。

平成最初のシーズンだった89年、現役のPL出身選手は22人もいた。新井、桑田、清原(当時西武)、立浪のほか、西田真二(元広島)と木戸克彦(元阪神)の78年夏の甲子園優勝バッテリー、81年にセンバツ初優勝した際の主将、吉村禎章(元巨人)、立浪とともに87年に甲子園で春夏連覇した投手の野村弘樹(元横浜)、橋本清(元巨人)らだ。

PL学園野球部が活動休止となっている現在、現役選手は減る一方だ。米球界に前田、プロ野球は福留、中川圭の2人と計3人しかいない。

コーチとして存在感

かつてのPLのように、現在のプロ野球で一大勢力となっているのが大阪桐蔭だ。今季の現役選手は23人で、中村剛也(西武)、平田良介(中日)、中田翔(巨人)、浅村栄斗(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)、森友哉(西武)らスター選手のほか、藤原恭大(ロッテ)、根尾昂(中日)ら18年の甲子園春夏連覇メンバーもいる。PL出身者が22人いた89年、大阪桐蔭出身者は新人の今中慎二(元中日)ら2人だけだった。時代の流れを感じざるを得ない。

マスターズ甲子園2019に出場し、記念撮影するPL学園OBチームの(手前左から)桑田真澄投手、中村順司総監督。手前右は清水哲監督=2019年11月9日、甲子園(二星昭子撮影)
マスターズ甲子園2019に出場し、記念撮影するPL学園OBチームの(手前左から)桑田真澄投手、中村順司総監督。手前右は清水哲監督=2019年11月9日、甲子園(二星昭子撮影)

ただ、PL出身のコーチは少なくない。楽天監督を務めた経験を持つ西武の平石洋介打撃コーチ、ヤクルトの尾花高夫2軍チーフコーチ、オリックスの入来祐作投手コーチ、ソフトバンクの松山秀明2軍内野守備走塁コーチらだ。

中村さんはPL監督時代、選手らに「球道即人道」の教えを説いた。野球の中に人間社会の縮図があるという意味だ。立浪監督を筆頭とする教え子らはその教えを胸に、次世代のスターの育成にいそしんでいる。川崎市から名古屋へ駆けつける中村さんは「長くボールを投げていない。しっかりと体操しています」と当日を楽しみにしている。(鮫島敬三)

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