ロシアのウクライナ侵攻を機に、日本の国防論議が熱を帯びてきた。敵基地攻撃能力の保持や核共有を主張する保守・右派は、専守防衛や非核三原則の見直しの必要を説くが、反対する革新・左派は、専守防衛や非核三原則は「国是」であり堅持すべきだと言う。しかし、そもそも国是とは何なのか。憲法と国是はどのような関係にあるのか。
防衛白書によれば、専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢」とされる。50年以上前から言われてきたが、そもそも防衛白書は時の政府の国防戦略に過ぎない。非核三原則(=核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)は、これまた50年以上前の首相施政方針演説の一内容である。いずれも憲法どころか法律や政令・省令ですらない。にもかかわらず、いつのまにか国是と呼ばれ、憲法よりも高次の規範であるかのような扱いすら受けている。