北海道・知床半島沖で沈没した観光船「KAZU Ⅰ(カズ・ワン)」の引き揚げ作業が本日から始まる。深さ120メートルの海底の現場で重要な役割を果たしているのが「飽和潜水」とよばれる特殊な技術である。潜水士が深海の高い圧力に適応できるよう、加圧された部屋で体を適応させてから、海中に送り出す。
▼作業に当たるのは民間企業のダイバーだが、海上自衛隊でも日夜、研究と訓練が行われている。潜水艦が万一事故を起こした場合、乗員を救い出すのになくてはならないからだ。日本の飽和潜水の技術は世界のトップクラスにある。
▼2000年8月にロシア海軍の原子力潜水艦「クルスク」が沈没、乗員118人全員が死亡した事故では、救助要請があればすぐ出動できるように準備していたそうだ。クルスクは水深108メートルの海底で発見された。ロシアには深海での救難作業に必要な装備がなかったにもかかわらず、当初は他国からの援助を拒否していた。