バイデン大統領、拉致家族と面会「気持ち分かる」 子供失った経験語る

北朝鮮による拉致被害者家族と面会するバイデン米大統領(手前左)=23日午後、東京・元赤坂の迎賓館(内閣広報室提供)
北朝鮮による拉致被害者家族と面会するバイデン米大統領(手前左)=23日午後、東京・元赤坂の迎賓館(内閣広報室提供)

北朝鮮による拉致被害者家族が23日のバイデン米大統領との面会後、東京都内で会見した。横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=の弟で家族会代表の拓也さん(53)は「変わらぬ支援の気持ちを頂き、勇気づけられた。(面会は)国際社会に対する強力なメッセージになる」と手応えを述べた。

バイデン氏はめぐみさんの母、早紀江さん(86)を抱擁するなど、面会は終始、「ハートウオーミングな時間」(拓也さん)だったという。

8家族11人が参加し、東京・元赤坂の迎賓館で午後3時前から30分間、実施された。冒頭、拓也さんのあいさつの途中、早紀江さんが高齢になっていることに触れると、バイデン氏は着座していた早紀江さんに近づいてひざまずき、子供を病などで亡くした自身の過去を説明。子供の写真を財布に入れ常に持ち歩いていることも明かしたという。

会見で早紀江さんは「『あなた方の気持ちはよく分かる』とおっしゃっていた」と、このときのやり取りを振り返り、「優しい人だった」と述べた。

バイデン氏はその後、「ハグをしてもいいですか」と尋ね、早紀江さんを抱擁。続いて家族一人一人と会話を交わした。関係者によると、こうした交流の時間は当初、予定されていなかったものだった。

家族らはこれまでに、バイデン氏を含め4人の米大統領と面会し、事態進展への協力を求めてきた。

1人目のブッシュ氏は「指導者が拉致を奨励することは心がない」(平成18年)、2人目のオバマ氏も「政治家ではなく人の親として許せない」(26年)などと述べ、北朝鮮を非難。米政府への地道な働きかけが奏功し、前大統領のトランプ氏は米朝首脳会談で金正恩朝鮮労働党委員長(当時)に再三、拉致問題を提起するに至った。トランプ氏はまた、家族に直筆の手紙を送るなど「共闘」の意思を明確に示した。

ただ、家族に共通するのは、解決主体はあくまで日本政府であるとの思いだ。 市川修一さん(67)=同(23)=の兄、健一さん(77)はこの日の会見で、「米国には、家族の長年の苦しみを分かってもらえたと思う」としたうえで、「日本政府は、あらゆる策を講じ、主権国家としての証しを示してほしい」と訴えた。

14年の被害者5人の帰国以来、明確な成果はなく、令和元年のトランプ氏との面会以降でも、めぐみさんの父の滋さんや、田口八重子さん(66)=同(22)=の兄で家族会前代表の飯塚繁雄さんらが、再会を果たせないまま亡くなっている。

田口さんの長男、飯塚耕一郎さん(45)は「前代表が亡くなってから半年ほど過ぎるが、この間、政府が何をしていたのか、全く分からない。家族が亡くなったことの重みをどう受け止めているのか、全く見えない」と指摘。「新型コロナウイルス禍も落ち着きつつあるこれからの時期、岸田(文雄)首相の本気度が分かってくると思う」とし、改めて具体的な発信や取り組みを求めた。

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