米国は日本でインド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足を正式発表する予定だ。中国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入申請など攻勢を強める中、米国がアジアへの関与を強めること自体は地政学的に重要で歓迎すべきだ。ただしアジア諸国の受け止め方は複雑だ。米国に対する警戒感、不信感は根深い。日本は水面下でその〝橋渡し〟に奔走してきた。昨年10月にバイデン大統領が構想を発表して以来、関係国と協議を重ね、漸(ようや)く「中身の議論を開始する」スタートラインに立った。しかし果たして謳(うた)い文句の「新たな経済圏」につながるのかゴールの絵姿は見えてはいない。
日本は「橋渡し役」
構想の発端はバイデン政権の置かれた国内政治状況だ。議会からはバイデン政権は中国の積極的な攻勢に効果的な対抗策を打てていないとの批判も強い。一方、米国内の世論は自由貿易への反対が根深く、TPPへの復帰は国内政治的にあり得ない選択だ。そこで苦肉の策としてひねり出したのがこの構想だ。これに対してアジアの国々の反応はどうか。日本、豪州、韓国などはともかくも、どこまで幅広くアジアの国々を巻き込めるかがポイントだ。