モリソン氏誤算「対中・安保」争点にならず 豪州総選挙

8日、オーストラリア・シドニーで党首討論に臨むモリソン首相(右)と労働党のアルバニージー党首(ロイター)
8日、オーストラリア・シドニーで党首討論に臨むモリソン首相(右)と労働党のアルバニージー党首(ロイター)

【シドニー=森浩】21日投開票のオーストラリア総選挙で、モリソン首相は中国への強硬姿勢や安全保障面での実績を強調したが主要な争点にはならなかった。アルバニージー労働党党首は外交・安保での突っ込んだ論争を避け、社会保障の充実などを繰り返し主張。物価高に悩む国民は政権交代を選択した。

「次期首相のアルバニージー氏に祝意を伝えた。彼の成功を祈る」。モリソン首相は21日夜の記者会見で敗北を宣言した。

モリソン氏が勝利を収めた2019年の前回総選挙時と比べ、豪州をめぐる環境で決定的に変化したのは中国との関係だ。モリソン政権が20年4月に新型コロナウイルスの発生源について第三者による独立調査を求めたことで、両国関係は急速に冷え込んだ。

対中強硬姿勢を鮮明にしたモリソン政権は、中国を念頭に軍備増強計画や、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた原子力潜水艦導入を決めた。モリソン氏はこうした実績を掲げ、外交・安保を選挙戦の主要テーマに据えようとした。労働党は過去の与党時代に軍縮を進めた経緯があり、モリソン氏は「労働党を選ぶのは安保政策上のリスクだ」と訴え危機感をあおった。

だが、国民の関心が集中したのは物価高だ。豪州では22年1~3月の物価上昇率が5・1%と過去20年で最高水準に達した。世論調査で選挙戦の争点に「生活費」を挙げた国民は半数を超えた。労働党が外交・安保で保守連合と政策に違いがない点を強調したこともモリソン氏の誤算だった。

アルバニージー氏は国民の不満を意識し、「物価が上がっているのに賃金上昇が追い付いていない」と主張し、最低賃金の引き上げなどを訴えた。内政に焦点を当てた選挙戦略が支持を呼び込んだ形だ。

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