多くの日本人が今、最も注視している国際政治問題はウクライナ情勢ではないだろうか。ウクライナ第2の都市である東部ハリコフの解放など、ウクライナ軍の善戦が報道されているものの、ロシアがまだ本腰を入れて戦時体制に移行していないことを踏まえれば、ウクライナの勝利は近いとは言い難い。
前回も記したとおり、この戦争の勝敗は、先の2つの世界大戦と同様に、米国が介入するか否かにかかっている。むろん、ロシアもこの事実を認識しており、いくら米国が大量の資金と武器をウクライナに供給して継戦を可能にしていても、米国を強く刺激する行為は控え、慎重に対応している。
では、その肝心の米国はどうか。今月2日に発表されたワシントン・ポスト―ABCテレビの世論調査では、7割の国民がさらに多くの人道的支援をウクライナに提供し、かつより厳しい対ロシア経済制裁を科すべきであると回答した。その一方で、戦争への直接的な介入を支持するのは2割程度でしかない。つまり、ウクライナでの戦争はまだ「米国の戦争」とはなっていないのだ。その米国人の関心は何かと言えば、サプライチェーン(供給網)問題で跳ね上がった物価であり、特に日常生活に欠かせないガソリン価格の高騰に悲鳴を上げている。その他、同国で連日大きく報道されているのは品薄状態が続く粉ミルクで、乳幼児を抱える母親を中心に深刻な問題となっている。