世界のかたち、日本のかたち

興味深いAUKUS参加 大阪大名誉教授・坂元一哉

米英豪3カ国の新たな安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設をめぐり、バイデン米大統領(左)らとの記者会見にオンライン形式で臨むジョンソン英首相=2021年9月15日 (AP)
米英豪3カ国の新たな安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」創設をめぐり、バイデン米大統領(左)らとの記者会見にオンライン形式で臨むジョンソン英首相=2021年9月15日 (AP)

米国、英国、オーストラリアが、3カ国で作るインド太平洋地域の安全保障枠組みで、軍事技術協力を主な目的とする「AUKUS(オーカス)」への日本の参加を非公式に打診していると、4月13日付の本紙朝刊が複数の政府関係者の話として、報じていた。

その後、松野博一官房長官は打診の事実を否定し、米国の大統領報道官も否定している。この記事でいう「非公式」な「打診」の、具体的なところがつまびらかではないので、実際にどのような話になっているのか、真相は不明というしかないが、興味深い話である。

日本は、米英豪との間でそれぞれ2国間の安全保障の取り決めを結んでおり(米国とは日米安保条約、英国・豪州とは「戦略的パートナーシップ」)、事実上AUKUSと同じメンバーの多国間連携の枠組みをすでに持っているとも考えられる。だが、それはあくまで日本から見た話であり、米英豪やそれ以外の国際社会からも、日本と米英豪との多国間連携がはっきり見えるようにする方が、「自由で開かれたインド太平洋」という日本の外交安全保障構想を推進するために、また中国を牽制(けんせい)するためにも望ましい。AUKUS参加は、それを可能にするという意味だけでも、日本の利益になる話である。

本紙記事によれば、米英豪は日本のAUKUS参加により、極超音速ミサイル、電子戦能力、サイバー、人工知能(AI)、量子技術など防衛装備品の先端技術開発で、日本の技術力との相乗効果を得たいという期待があるらしい。

中でも、高速で飛行し、進路を自在に変えるため、現時点では迎撃ができないともいわれる極超音速ミサイルは北朝鮮が開発していることもあり、日本の安全保障にとっても、その迎撃技術の開発が焦眉の課題となっている。

実際、防衛省は、飛来する極超音速ミサイルを宇宙空間に配備した人工衛星群で上空から探知追尾するシステム、また迎撃のために弾丸を高速の初速で連射するレールガンなど、革新的で、独創性のある「萌芽(ほうが)的」な技術の研究開発に予算を計上している。AUKUS3カ国との共同研究開発ができれば、これら技術の迅速かつ効率的な開発に役立つのではないか。

米国は、中国海軍の軍備増大に対抗するため、豪州に原子力潜水艦の技術を提供し、このことを軸にしてAUKUSを立ち上げたが、米中の覇権競争は、海洋だけではなく宇宙にも及んでいる。宇宙の覇権競争の行方を決めるのも、技術力である。

宇宙の分野で日本は、小惑星リュウグウの試料を地球に持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ2」の快挙に見られるように、優れた技術と経験をもっている。日本がさまざまなやりかたで、AUKUSの軍事的実力強化に貢献できれば、米国や英国、豪州としても助かるだろう。

ここは打診の有無にかかわらず、こちらから参加を希望し、その可能性を探ってみてはどうかと思う。 (さかもと かずや)

会員限定記事会員サービス詳細