FIGHT10 いきもの巡り

恋成就へおめかしエトピリカ アクアワールド茨城県大洗水族館

まるで化粧を施したようなエトピリカ(左)は夏を過ぎるとすっかり地味な面持ち(右)に(アクアワールド茨城県大洗水族館提供)
まるで化粧を施したようなエトピリカ(左)は夏を過ぎるとすっかり地味な面持ち(右)に(アクアワールド茨城県大洗水族館提供)

頰におしろいを塗り、濃いめの紅(べに)で口元を彩る。仕上げに鮮やかな簪(かんざし)を挿し、妖艶ないで立ちでいざ、お客さまの前へ。その美しさを競い合うように、次々と目の前にやってきては、時に舞い踊り、時にじっと見つめる。水面に浮かんで。アクリルガラス越しに…。

そう、実はこれ、当館で展示している「エトピリカ」の話です。北太平洋沿岸に生息するウミスズメ科の海鳥で、日本では近年生息数が減少し、北海道東部の島で数羽のみが繁殖しているようです。

そんな希少なエトピリカの特徴は、真っ白な顔に濃いオレンジ色のくちばし、そして目の上から後ろへ垂れ下がる黄金色の飾り羽根。そもそも、エトピリカはアイヌの言葉で「美しいくちばし」を意味し、冒頭でご紹介したように、その姿はまるで化粧を施したかのように鮮やかです。

あまりの美しさに、付けられた異名は「花魁鳥(おいらんどり)」。自然物とは思えないような配色に目を奪われます。

しかしながら、この特徴的な顔かたちを目にすることができるのは、春から夏にかけての数カ月間だけ。その時期を過ぎると飾り羽根は抜け落ち、顔は黒く、くちばしは色味を失って小さくなります。

春から夏は、エトピリカにとって繁殖の時期、恋の季節です。雄雌を問わず鮮やかな顔になる彼・彼女らは恋を成就させるため、おめかしをするわけです。ちょうど今ごろ、水槽内では恋の駆け引きが繰り広げられていることでしょう。

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