衝撃事件の核心

病院職員をズブズブにした「便利屋」の接待攻勢

収賄容疑で警視庁に逮捕された安彦昌人容疑者が企画課長を務めていた独立行政法人国立病院機構「下志津病院」=12日、千葉県四街道市(塔野岡剛撮影)
収賄容疑で警視庁に逮捕された安彦昌人容疑者が企画課長を務めていた独立行政法人国立病院機構「下志津病院」=12日、千葉県四街道市(塔野岡剛撮影)

独立行政法人国立病院機構が運営する下志津病院(千葉県四街道市)の調達を巡る贈収賄事件。「病院の便利屋」と呼ばれる取引業者から多くの職員が食事や旅行の招待など〝接待攻勢〟を受け、さらに、幹部が病院側が発注する随意契約に便宜を図っていたズブズブの関係が明らかになった。みなし公務員である機構職員の若手から管理職までが接待漬けになっていたという倫理観の薄さが浮き彫りになった。

次々と発覚する不正

「小松電器の社長から飲食などの接待を受けている人がいる」

令和3年2月、国立病院機構に匿名の内部通報が寄せられた。それを受け、同機構は同月から契約担当の職員からの聞き取りなどの調査を開始すると、医療機器などを機構傘下の病院に卸していた電気製品販売会社「小松電器」から機構職員への〝接待攻勢〟が次々と明らかになった。

一部の職員は飲食やスマートウオッチ(4~5万円相当)を提供してもらったり、旅行に招待されたりしていた。また、ほかの職員はトナーカートリッジや乾電池などの備品購入に関して、他社の入札価格を小松電器に提供するなどの不正が次々と発覚した。

同機構は関与した職員ら28人を懲戒解雇や停職などの処分にし、小松電器は24カ月の指名停止とした。

同機構は調査終了後、3年10月に警視庁に相談。警視庁が不正の解明を進めていくと、処分を受けていないある職員の関与が浮上してきた。

就任直後から接待受け…

捜査2課は今月11日、収賄容疑で、病院元企画課長、安彦(あびこ)昌人容疑者(60)を逮捕し、贈賄容疑で「小松電器」(千葉県船橋市)社長、松丸隆行容疑者(43)を逮捕した。

捜査2課によると、安彦容疑者は令和元年7月~2年9月、下志津病院のトイレ修理工事などの随意契約を巡って小松電器側に便宜を図り、松丸容疑者側はその見返りとして旅行や飲食などの接待(約60万円相当)やノートパソコンなど計5点(約30万円相当)を賄賂として提供したとしている。

同機構は調査で、安彦容疑者に3回にわたり接待や不正への関与を尋ねたが、いずれも否定していたという。ただ、実際は安彦容疑者は平成31年4月に下志津病院の契約事務を取り仕切る企画課長に就任してからわずか3カ月後の7月には小松電器側から三重県への旅行接待を受けていた。

捜査2課は、安彦容疑者が、贈収賄を立件する際に必要な職務権限を有しており、就任直後から接待を受け悪質性が高いことなどから逮捕に踏み切った。

捜査幹部は「贈賄側が若い職員を含め接待漬けにしている」と指弾する。

「病院の便利屋」

民間信用調査会社などによると、小松電器は従業員7人。松丸容疑者が平成30年に社長に就任すると、売上高は右肩上がりで令和3年10月期には約7億円に上った。

「これまでの長い年月の営業努力でうちは病院などからかゆいところに手が届く『便利屋』と呼ばれる」

松丸容疑者の父である前社長こう話す。実際に、小松電器は電気製品の販売などが主な業務だが、元年の台風15号で下志津病院の木が倒れる被害が出ると、倒木の処理なども手掛けた。

自らが社長を務めていたときも、そうした業務も引き受けながら病院との関係を作ってきたとしながらも、事件については「企業努力だからといって贈賄が認められるわけではない。やってはいけないことをしてしまった」と息子の行為に頭を下げた。

松丸容疑者は病院側の工事発注に対して、ほかの企業名義で架空の見積もりを作成していたことが判明。同機構は取り決めで、随意契約でなるべく複数の業者から見積もりを取ることを求めていたことから、適正な選定を装い確実に受注できるよう、安彦容疑者が便宜を図っていたとみられる。

捜査関係者によると、小松電器は同病院が発注した少額の随意契約を多数受注しているという。捜査2課は事件の全容解明に向けて捜査を続けている。(宮野佳幸、塔野岡剛)

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