「マリウポリ製鉄所を完全制圧」 と露国防省が発表

ロシア国防省が19日提供した、製鉄所から退避するウクライナ兵の画像=ウクライナ・マリウポリ(同省提供、AP=共同)
ロシア国防省が19日提供した、製鉄所から退避するウクライナ兵の画像=ウクライナ・マリウポリ(同省提供、AP=共同)

ロシア国防省は20日、ウクライナ東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に残っていたウクライナ部隊の最後のグループ531人が投降し、ショイグ露国防相が同製鉄所の完全制圧をプーチン大統領に報告したと発表した。

露国防省は最終的な投降者数は2439人だとしている。2カ月半を超えたマリウポリ攻防戦は一応の区切りを迎えた。

これに先立ち、ウクライナのゼレンスキー大統領も就任3周年を迎えた同日、記者会見で「製鉄所から実質的にほぼ全員が退避した」と述べた。同国メディアが伝えた。

ゼレンスキー氏は会見で「対空砲火で撃墜される危険を知りながら、多くのヘリの操縦士が水や食料、医薬品を届けるため製鉄所に飛んだ。90%が帰還せず、亡くなった」と明かし、籠城した部隊だけでなく、部隊の救出作戦に携わった全員が「英雄」だとした。

露軍は侵攻開始直後にマリウポリを包囲。市街地は露軍の攻撃で廃虚と化した。市当局は市民2万人以上が犠牲になったと推計している。露国防省は4月21日、市街地の制圧を発表。その後もウクライナの「アゾフ大隊」などが製鉄所に籠城し、抗戦してきた。

ウクライナ政府は今月中旬、「戦闘任務が完了した」として籠城部隊に露軍への投降を呼び掛け、16日から退避が始まった。ウクライナ側は、部隊がロシアの大軍を足止めしたことで各地で防衛線の構築に成功したと評価している。

ウクライナ側はロシアとの捕虜交換交渉を通じ、投降した兵士らの帰還を目指す。ただ、ロシアは「ネオナチ」だとして敵視するアゾフ大隊を「戦争犯罪」で刑事訴追する構えで、兵士らの命運は定かでない。

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