対北「圧力」強調も具体策なし 米韓首脳会談

21日、ソウルで会談後、共同記者会見するバイデン米大統領(左)と韓国の尹錫悦大統領(聯合=共同)
21日、ソウルで会談後、共同記者会見するバイデン米大統領(左)と韓国の尹錫悦大統領(聯合=共同)

【ソウル=時吉達也】バイデン米大統領と尹錫悦韓国大統領は21日の首脳会談で、米国が提供する拡大抑止(核の傘)について話し合う「拡大抑止戦略協議グループ」(EDSCG)の会議を再開させることで合意した。トランプ、文在寅前政権下で形骸化した同会議を通じ、北朝鮮への圧力を強める構えだ。ただ、兵器の追加配備などについて具体的な計画などは示されておらず、新型コロナウイルス禍にあっても核・ミサイル開発を強行する兆候を示す北朝鮮の非核化につながるかは不透明だ。

EDSCGは2016年、北朝鮮に対する核抑止の実効性を高める狙いで発足した。しかし、18年に南北、米朝首脳会談などが実施され「対話ムード」が高まると中断。19年のベトナム・ハノイでの米朝再会談が決裂した後も、対話による解決を求める文政権は会議の再開に消極的だった。

一方、今月10日に大統領に就任した尹氏は「一時的に戦争を回避するもろい平和ではなく、自由と繁栄を花開かせる持続可能な平和を追求すべきだ」(就任演説)と述べ、文政権の「融和路線」からの転換を繰り返し表明してきた。21日の共同記者会見でも、「拡大抑止といえば『核の傘』だけを考えるが、戦闘機やミサイルなど多様な戦略資産(兵器)の展開も議論する」と強調した。

しかし、北朝鮮が米韓の圧力を受けても、核開発を中断する気配はないのが実情だ。4月末以降の新型コロナウイルスの感染急拡大で、国内の発熱患者の累計は21日現在、推定人口の約1割にあたる約246万人を記録。それでも米韓の医療品支援表明などに応じる意思は示していない。

北朝鮮の対外宣伝サイト「わが民族同士」はバイデン氏訪韓に先立ち19日、論評で北朝鮮が「名実ともに核保有国である」と主張。「軽挙妄動は災難を招くだけ」だと述べ、米韓の対北連携強化を牽制した。

韓国大統領府関係者は21日の会談後、EDSCGの意義について「この間、十分に議論されてこなかったので、今後の議論の中で何が必要か見えてくるだろう」と述べるにとどめた。

米韓、対北「抑止強化」で一致 首脳会談

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