コロナ直言(21)

感情でなく科学的根拠でマスク着脱を 埼玉医科大教授・岡秀昭氏

埼玉医科大総合医療センター教授の岡秀昭氏(埼玉医科大提供)
埼玉医科大総合医療センター教授の岡秀昭氏(埼玉医科大提供)

《政府は20日、新型コロナウイルス対策のマスク着用に関し、多数が利用する公共交通機関などでは引き続き着用を求めるとした。屋外であっても人混みで会話する場合も同様だ》

マスク着用による感染予防効果については多数のエビデンス(科学的根拠)が示されている。ただ、不織布など効果が高いマスクほど息苦しさや閉塞(へいそく)感を覚えるのも事実。長引くマスク生活で精神的に負担を感じている人もいるし、これから暑さが厳しい季節になると体温がこもり、熱中症のリスクにもつながる。

着用の必要性は周囲の状況次第だ。密室にいる10人のうち1人でも陽性者がいれば、多くの人が感染する恐れがあるが、相互にマスクをしていればリスクは下げられる。一方、1人で車を運転しているときや換気が十分で周囲に誰もいないときは着用に意味はない。

《マスクをめぐる議論が本格化した今も、多くの国民が違和感を抱かずマスク着用を続けている》

日本人は学校で制服を着たり、周囲にいる多くの人と同じ行動をしたり同調性が高い。ワクチンが普及する前に諸外国ほど感染拡大しなかったのは、そうした国民性が功を奏した面もあるのではないか。

しかしワクチン接種が進み、重症化リスクが下がった今、「みんな着けている」「人目が気になる」という感情より、科学的根拠をもとに一人一人が状況に応じて着脱のタイミングを判断する時期にきている。

感染拡大を防ぐために「密閉、密集、密接」の「3密」を避けることが推奨され、今や国民の誰もが知る考え方となった。例えば「3密になる環境では必ずマスクを着けましょう」といったように、政府や行政には、国民が正しく判断できるよう、正確で分かりやすい情報発信をお願いしたい。

《ウィズコロナの中で適切にマスクの着脱を判断するには何が必要になるのか》

長期的にみれば教育が大切だ。なぜマスクをするのか、この薬は本当に効果があるのかといった、感染症対策と科学的なデータの解析についての知識を義務教育の段階から子供たちにきちんと教えるべきだ。

行政改革の一環で全国にある保健所は統廃合が進み、人員も削減されてきたが、コロナ禍で業務は逼迫(ひっぱく)した。いざというときに備えて体制を見直すとともに、平時は学校や企業、地域で公衆衛生について教育や啓発をするのも一つの手ではないか。

時間はかかるだろう。しかしこうした教育を続ければ、感情ではなく科学に基づいて必要な対策を自分で判断できる国民が増える。コロナが収束しても、数年後にはまた別の感染症が流行する可能性もある。地震や津波と同じように社会全体で体制整備と教育を重ね、次のパンデミック(世界的大流行)に備えることが重要だ。(聞き手 小川原咲)

おか・ひであき 埼玉医科大総合医療センター総合診療内科・感染症科教授。日本大医学部卒。横浜市立大大学院で博士号取得後、神戸大病院、東京高輪病院などを経て、平成29年に埼玉医科大総合医療センターに着任。令和2年9月からは病院長補佐として感染症診療の指揮をとる。

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