大事に思う
「子供のかわいさ」はいったい、何に根ざしているのかと考えてみたことがある。無邪気、天真爛漫(らんまん)、無垢(むく)、純真、あどけない、いじらしい、がんぜない…と子供の魅力を伝える言葉は数々あるが、いずれも一面的で分析的な印象が拭えず、大抵の人は子供特有の顔立ちや体形、しぐさ、性質などをひっくるめて「かわいい」と言い表すのではないかと思われる。「かわいい」はまさしく理屈抜きの感情で、子供に対するこれ以上の好意表現は恐らくないのではあるまいか。
各種国語辞典によると、「かわいい」(古形は「かはゆし」)はもともと「あわれで人の同情を誘うような不憫(ふびん)なさま」をいった。だがこの意味は近世後半に消失し、今では主に次のような気持ちを表す形容詞として一般に流通している。①(人や動物に)心がひかれて大事にしたい②(女性や子供の顔、姿などが)愛らしい③(品物が)小さくて優しく扱ってやりたい―。当今の若い女性らが何につけ、それこそケーキや文房具の類にまで感動詞的に「かわいい!」を使ったりするのは③の意味でだろう。