政府は、全世代型社会保障構築会議の中間整理を了承した。
若者や子育て世代への支援強化を「未来への投資」と位置づけ、税や社会保障の仕組みによって働き方や働く時間を決めずに済むような制度の構築を目指して、「勤労者皆保険」の実現を盛り込んでいる。
全世代型の議論は給付は高齢者向け、負担は現役世代に偏っていることの見直しで始まったのに、どのような子育て支援を行うのか、その財源をどう調達するのか不明である。
勤労者皆保険をいつまでに実現するかも、はっきりしない。絵に描いた餅にせぬよう、具体策と工程表を早く示し、国民的な議論を開始してもらいたい。
団塊の世代が全員、後期高齢者になる令和7年は目前だ。22年には生産年齢人口は6千万人を切る。担い手の確保も含めて、社会保障制度の持続可能性を高めることは政府の最優先課題である。
勤労者皆保険では、厚生年金などが適用される企業規模要件の撤廃や、非適用業種の見直しを検討すべきだとした。50人以下の事業所で週20時間以上働く短時間労働者などへの拡大が想定される。
働き方が多様化する中で、雇われて働きながら、事業所の規模や雇用形態などにより厚生年金や組合健康保険などに入れない人が増えている。
こうした人が、自営業者を対象にした国民年金などに入っていても老後の保障は保たれない。被用者保険の対象を拡大していくことは合理的である。保険料負担が生じる中小事業者の影響に配慮し、着実に進めなければいけない。
フリーランスなどの働き方についても被用者性を検討した上で適用の在り方を考えるとした。だが雇用契約を結ばず、仕事量や時間、働き方を自由に選べる業務形態を、どう「被用者」に位置付けるかは根本的な整理が必要だ。
同会議の下部組織は昨年末、公的価格の在り方を検討し、政府は介護職、看護職、保育士・幼稚園教諭らの賃金を引き上げた。この施策が、今回の中間整理に位置付けられていないのは残念だ。
いずれの職種にも短時間雇用の女性が多い。仕事と家庭の両立がしやすくなり、雇用調整をせずに長く働こうと思ってもらえるかどうかは、社会保障の持続可能性の試金石である。