中井貴一、伊能図誕生の秘話を語る 映画「大河への道」

映画「大河への道」で主演を務める中井貴一=3月29日午後、東京都渋谷区のイイノ広尾スタジオ(松井英幸撮影)
映画「大河への道」で主演を務める中井貴一=3月29日午後、東京都渋谷区のイイノ広尾スタジオ(松井英幸撮影)

「何としてもこれを映画にしたい」-。日本初の実測地図を作った伊能忠敬(いのう・ただたか、1745~1818年)を題材にした立川志の輔の新作落語を聞いた中井貴一(60)の熱い思いから製作された映画「大河への道」。自身が企画し、脚本には約4年を要した。伊能と製作陣の思いをダブらせながら、中井は「『大河への道』への道ということで、どこか『乗り掛かった船』という思いで完成させた」と話す。

人工衛星も飛行機もない時代に伊能が作った「大日本沿海輿地全図」(伊能図)に衛星写真の日本列島を重ねると、その誤差はわずかという。伊能が55歳から17年かけて日本全国を測量し、歩いた距離は地球1周分に相当するとされる。

この偉業が原作の新作落語誕生のきっかけにもなったが、中井も「人間力はあの頃の方がはるかに勝っていたかもしれない」と地図の精緻さに驚愕(きょうがく)したという。

「何か一つのことに向かってコツコツと頑張る姿が胸を打つのは、江戸時代も現代も変わらない。それを一本の映画として描いてみたかった」

令和と江戸時代の登場人物を、一人二役で演じている。郷土の偉人、伊能を主人公とする大河ドラマの実現に向けて奔走する千葉県香取市役所の職員と、実在の江戸幕府天文方(天体観測や測量などに従事)の高橋景保(かげやす)だ。

「現代と江戸時代が共存しているが、現代劇はコメディー、時代劇はシリアスという使い分けをしている。時代劇だけではないので、子供たちにも分かりやすくなっていると思う」

本作では日本初の全国地図誕生〝秘話〟が描かれている。伊能と弟子たちが作り上げた伊能図は、縦横60×40メートルほどにも及ぶ。映画には、江戸城大広間で将軍が伊能図を上覧する場面が登場する。

「いちばん大きいセットを使ったが当然、全部入らない。どれだけ大きいかを皆さんに分かってもらうため、CG(コンピューターグラフィックス)で再現した」

自身のさまざまな思いが詰まった本作。「子供たちには伊能のすごさや、最初の日本地図はこうやってできたんだということを通じ、歴史にはロマンがあるということを感じてもらえたらうれしい」

そして年配の人たちにも、ぜひ作品を通して新たな可能性に気づいてほしいという。

「僕よりも上の世代の人たちは『終活』という名の下に人生の終わりに向かおうとするけれど、それでいいのだろうか。伊能が地図作りを始めた55歳は、今だと75歳ぐらいに匹敵するのでは。そこから地球1周分を歩いたということを皆さんに伝えたい」(水沼啓子)

なかい・きいち 昭和36年東京生まれ。父親は俳優、佐田啓二。56年、映画「連合艦隊」でデビュー。ドラマ「ふぞろいの林檎(りんご)たち」で人気を博し、NHK大河ドラマ「武田信玄」、映画「ビルマの竪琴」「壬生(みぶ)義士伝」などで主演を務めた。紫綬褒章受章。

20日から東京・丸の内ピカデリー、大阪・梅田ブルク7などで全国公開。松山ケンイチ、北川景子らが共演。監督は中西健二。1時間52分。

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