英、EUと摩擦か 「北アイルランド」問題でルール変更模索

トラス外相=ロンドン(英議会提供、ロイター=共同)
トラス外相=ロンドン(英議会提供、ロイター=共同)

【ロンドン=板東和正】英国が本土と英領北アイルランドの間に税関手続きが発生した欧州連合(EU)離脱に伴う通商ルールの変更に乗り出した。北アイルランドでは議会選で勝利した親アイルランド派政党に対し、本土との一体性を重視し、第2党に転落した民主統一党(DUP)が協力を拒み、自治政府の新政権樹立が見通せない。DUPは協力の条件として通商ルールの変更を求め、英政府が応じようとしている形だが、変更を拒否するEUとの摩擦が懸念される。

トラス英外相は17日、EUとの離脱協定に盛り込まれている通商ルールの変更に向けた法案を議会に提出すると表明した。新法案では、税関手続きの一部撤廃を含める見通しだ。

英国は2020年末でEUを完全離脱したが、北アイルランドと本土と間の物流に税関手続きを設ける通商ルールが決まった。北アイルランドとEU加盟国のアイルランドとの間で国境管理を復活させないためで、北アイルランドの帰属を巡り約30年間続いた紛争の再燃を防ぐ措置だった。

5日の北アイルランド議会選では、隣国アイルランドとの統一を掲げるカトリック系のシン・フェイン党が初めて第1党となった。同党はアイルランド統一を求めて過去にテロ行為を重ねた過激派、アイルランド共和軍(IRA)の元政治組織。選挙戦では住民の関心が高い住宅や医療の問題に焦点を当てて支持獲得につなげた。

北アイルランドでは1998年の和平合意の下、親アイルランド派と親英派の代表政党が共同で自治政府を運営している。第1党から首相、第2党から副首相を出すのが通例だが、DUPは副首相の擁立に非協力的な姿勢を見せ、通商ルールの修正がなければ「共同統治に応じない」との姿勢を示す。DUPは通商ルールの内容について以前から「(北アイルランドが)EUに取り残された」と不満を示していた。

政権を樹立できなければ共同統治の原則が崩れ「和平が危機に陥る」(トラス氏)との懸念は強い。現地では今春、親英派と親アイルランド派の住民が衝突する暴動も起こった。

ただ、EU欧州委員会のシェフチョビッチ副委員長は17日の声明で、「一方的な行動は許されない」と英側の動きに反発。「EUはあらゆる手段を講じて対応する」と警告した。

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