大統領選の取材のため、1週間ほどフィリピンに滞在した。印象に残ったのが、選挙集会の熱気だ。
5日に南部タグンで行われたフェルディナンド・マルコス・ジュニア元上院議員の選挙集会を取材したが、午後1時ごろから住民が集まり始め、あっという間に数万人規模に膨れ上がった。〝前座〟としてミュージシャンや芸能人が盛り上げ、午後7時にマルコス氏当人が姿を見せると興奮は最高潮に達した。
地元紙によると、選挙戦最終日、マルコス氏の集会には100万人、有力対抗馬のレニー・ロブレド副大統領の集会にも70万人が押し寄せたというが、誇張でない数字に感じる。
熱量の理由をフィリピン人たちに聞くと「若さ」にあると異口同音に話した。フィリピンは国民の平均年齢が約24歳。イベント好きで陽気な国民性もあり、普段は政治に関心が薄い若者たちも選挙を一大イベントとして楽しむ傾向にあるという。
今回の大統領選は若者層の支持を集めたマルコス氏が圧勝した。しかし、いったん国民が失望すれば熱狂は強烈な逆風に変わることは自明だ。民意の恐ろしさを一番知っているのは、街頭デモに倒された父の故マルコス元大統領を見ていたマルコス氏本人だろう。36年ぶりに復権した〝マルコス〟の政権運営が注目される。(森浩)