美女・美男図鑑「ルッキズム」批判に違和感も、近大パンフ騒動

近畿大パンフレットの「近大美女図鑑」
近畿大パンフレットの「近大美女図鑑」

近畿大が受験生向けに発行したパンフレットのコーナー「美女図鑑」「美男図鑑」をめぐって議論が起きている。大学側には「輝く学生を見てもらいたい」との狙いがあったが、学内外の関係者から「品性を疑う」「ルッキズム(外見至上主義)だ」との批判も。一方、学生にとっては人気コーナーだったといい、騒動を気にしていない人も多く、識者はむしろ過剰なルッキズム批判の弊害を危惧する。

パンフレットは近大が次年度の受験希望者向けに年1回発行している。「美女図鑑」「美男図鑑」は、約90ページの冊子の中ほどにあり、男女4人ずつを見開き2ページで紹介。顔と全身の写真の脇に、それぞれの身長や将来の夢、さらには好きなタイプといった回答が並ぶ。

近大によると、平成27年以降、東京の出版・企画編集会社と年間約20万部を共同で制作。大半がオープンキャンパスや受験説明会で希望者に無料で配布している。

近年は、外見で人の価値を決めるルッキズム批判やジェンダーの問題から、大学での「ミス・コンテスト」などを廃止する流れもあり、美女・美男図鑑へは懐疑的な声もある。4月18日、近大の教職員組合がツイッターで「学生を『見せ物』としか考えていない」と投稿したところ、交流サイト(SNS)で拡散。同組合の藤巻和宏書記長は「大学が一方的に美しさを判断したり、外見重視の姿勢を示したりするのはおかしい。顔写真と氏名、所属がひもづけられれば犯罪などに巻き込まれる危険性もある」と話す。否定的なトーンで騒動を取り上げたメディアもある。

学生たちはどう思うのか。「『美女・美男』の表現はまずい。学生が何万人もいる中、(特定の)少数の個人を取り上げる必要はないと思う」。総合社会学部1年の女子学生(18)はこう残念がる。

一方で、法学部3年の男子学生(20)は騒動が話題になったというが、「(コーナーは)面白いと思う。(知らない)学生をまじまじと見る機会もないので」。建築学部2年の女子学生(20)は、近大のイメージ戦略を念頭に「(受験を検討する高校生が)キラキラした憧れの大学生活をイメージできる。ひとつの広報手段としていい」と好意的だった。経済学部3年の男子学生(20)は「掲載されている学生がOKならば、それでいいのでは」と語った。

近大は毎年、入学生を対象にパンフレットについてアンケートを実施。約20の企画のうち、人気のないものは翌年度から刷新されることもあるが、美女・美男図鑑は、学食や時間割などの入学後の生活を紹介するコーナーと並び、人気が高い。

近大の担当者は「学生の普段の姿や輝いている姿を色々な切り口から見てもらうというのが狙い。容姿で差別を行う意図などない」と説明する。今後の対応については「学生の声を聞き慎重に検討する」とした。

専門家はどう見るのか。国際政治学者の三浦瑠麗(みうら・るり)氏は「順位を付けたり、格付けしたりしているものではない。何らかの価値観を押し付けているとまでは言えない」と指摘。その上で、IQの高さや運動神経など「何を是とするかはそれぞれの価値観。見た目が良いことで輝ける人もいる」と述べ、「過剰なルッキズム批判は、見た目の良さで自己実現を図ろうとする人の門戸を閉ざすことにつながる」との見方を示す。

容姿差別といった一般的なルッキズム問題は理解できるとしながらも、「そうした問題は講義や教育の場で取り扱われるものだ」とし、「ルッキズム批判を目的に、特定のカルチャーを排除する運動を展開するのは違うと思う」と強調。大学は学問だけでなく、人間関係の構築や社会に出るまでの教養を学ぶ場でもあるとし、「ニーズに応じた多様な強みを、大学がアピールできなくなるのは疑問に思う」と投げかけた。

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