泉ピン子「これは私の終活よ」 朗読劇「すぐ死ぬんだから」

「まるで私のことを書いているみたいな本なの」と話す泉ピン子(宮崎貢司撮影)
「まるで私のことを書いているみたいな本なの」と話す泉ピン子(宮崎貢司撮影)

女優の泉ピン子(74)が8月から、朗読劇「泉ピン子の『すぐ死ぬんだから』」を全国で上演する。泉が朗読劇を演じるのは初めて。原作は内館牧子のベストセラー小説で、老いを遠ざけて過ごす78歳の女性が、夫の死後に愛人と隠し子の存在を知る。上演台本と演出は笹部博司、作曲は宮川彬良で、共演は村田雄浩(たけひろ)。泉は「まるで私を書いているみたいだって思ったの。これは私の終活よ」と笑う。

作品は、品格のある老後を迎えるための〝終活〟物語。身だしなみに気を使い、若々しく見せようと生きる忍(おし)ハナは78歳。東京・麻布で息子に家業を譲り、夫婦で仲むつまじく隠居生活を送っていたが、夫の急死により、その裏を知ることに…。

東京都内で行われた会見で、泉は「朗読劇って芸術性が高いから、若い頃から憧れていた」と意気込みを語った。続けて、「ピッタリじゃない。この役は私以外いないでしょ」と力を込め、「…私生活込みで」と付け足した。

自身も平成7年、医師の夫に愛人と隠し子が発覚したことがある。主人公ハナの人生と重なるところは少なくないと話し、「女として、妻のプライドとして、すごくよく分かるの」と共感する。「でも、年を取ると都合の悪いことは忘れられる。気にしていないって言ったら噓になるけど、こだわっているなら、この仕事を受けていない。私も大きく成長したってこと」

なお、〝当事者〟の夫に本を渡したところ、「めちゃくちゃ面白いね!」という感想が返ってきたという。「うちの夫は能天気…」と脱力し、「お前、自分のやったこと忘れたのかよ。こっちは傷ついたのに、って思った」と苦笑いした。

昨年4月、ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」の脚本家で、「ママ」と呼び慕っていた橋田壽賀子(すがこ)が95歳で亡くなり、死生観が変わったという。「ママも死ぬんだってこと。人は死ぬ。だから元気なうちに、やりたいことをやろうと思った」と、今公演を〝終活〟と位置づけた理由を話す。

実は、一昨年からのコロナ禍で仕事が流れ、「70代だし、そろそろ仕事をやめなきゃいけないのかな」と弱気になり、「ママ」に相談したと明かす。その際、「70のガキが何言ってんの。90の私が仕事してるんだから」と発破をかけられたという。「その時は『ええ、まだやんのかい』と思ったのに」と、懐かしそうに目を細めた。

「泉ピン子を育ててくれたのは、『おしん』や『渡る世間は鬼ばかり』を見てくださった方々。だから、いろいろなところに足を運んで、『ありがとうございます』と言いたい」と話す。「私が死んだあとも、『ピン子ちゃん来たよね』と思い出してもらえたら、これ以上うれしいことはない」

テレビドラマで共演してきた村田雄浩との息はぴったりだ(宮﨑貢司撮影)
テレビドラマで共演してきた村田雄浩との息はぴったりだ(宮﨑貢司撮影)

共演の村田とも、「渡る世間は鬼ばかり」での仲。今公演について、村田は「お前、ヒマか?」と泉から直接誘われたといい、「話を聞いて、作品がピン子さんとカチッとはまった。これは面白くならないわけがない」と参加を決意。泉には「これは私の終活なんだから、最後までつき合ってもらうわよ」と頼まれている。

泉は「元気なうちに全国を回って、感謝を込めて演じたい」と笑顔で話す。(三宅令)

8月4~14日の「あうるすぽっと」(豊島区立舞台芸術交流センター)での東京公演を皮切りに、富山、福岡、熊本、鹿児島、大阪、愛知、神奈川で公演する。問い合わせはキョードー東京、0570・550・799。

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