「秩父太織」未来につなぐ パリで修行のデザイナー奮闘

マネキンに秩父太織の生地を合わせる井深麗奈さん(本人提供)
マネキンに秩父太織の生地を合わせる井深麗奈さん(本人提供)

埼玉県秩父市などに伝わる伝統的な絹織物「秩父太織(ふとり)」を使った洋服作りに、パリで修行を積んだ経験を持つ同市出身の服飾デザイナー、井深麗奈(いぶか・れいな)さん(50)が取り組んでいる。「秩父の絹文化を未来に残したい」。海外で培ったデザインのノウハウを生かしながら、伝統を未来につなごうと奮闘する。

井深さんは平成4年に文化服装学院を卒業し、下着ブランドの企画に携わった後、9年にフランスへ渡った。自身のブランドを展開するなどデザイナーとしての経験を積み、26年に日本に戻った。

秩父太織と出会ったのは帰国後のことだった。自身の郷土の絹織物だが、それまでは存在すら知らなかったという。機能性や耐久性の高さ、そして素材の良質さに驚き、多くの人へ届けたいと思った。

秩父太織は江戸時代、販売できない規格外の繭を使い、養蚕農家が衣服を作り始めたのが発祥だ。現在では、手掛ける職人は数人程度しかいないという。

井深麗奈さんがデザインした秩父太織の洋服(本人提供)
井深麗奈さんがデザインした秩父太織の洋服(本人提供)

井深さんは令和2年3月に自身のファッションブランド「REINA IBUKA」を設立し、秩父太織の洋服をデザインしている。秩父市の養蚕農家の繭だけを使い、伝統工芸士の職人が織り上げた秩父太織を大胆にあしらったコートやワンピース、ブラウスなどが評判だ。

「手織りの絹の艶が着る人の顔色を明るく見せ、美しいシルエットが女性らしさを引き立てる」と井深さん。手作業で作っているため、丈夫で長く身につけられる点も特長という。立体感を演出するための特殊な織り方を取り入れるなど、秩父太織の新たな可能性も模索する。

「秩父太織を多くの人に身にまとってもらい、秩父の風土や伝統を守ることに少しでも貢献できたら」と夢を描いた。(星直人)

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