マスク緩和に歓迎と不安 メリハリ求める声も

渋谷駅前を歩く人たち。まだマスク姿の人が多い=19日午後、東京都渋谷区(鴨川一也撮影)
渋谷駅前を歩く人たち。まだマスク姿の人が多い=19日午後、東京都渋谷区(鴨川一也撮影)

新型コロナウイルス対策の専門家有志が19日、マスク着用に関する見解を初めて明示した。熱中症や子供への影響を危惧する現場の医師からの問題提起をきっかけに、国民的な関心事に発展。街中ではランナーらが緩和の動きを歓迎する一方、感染リスクや人目を気にする声も聞かれた。(三宅陽子、末崎慎太郎)

子供の成長に影響も

「屋外で換気のいい場所はそれほど感染のリスクはないと思っている。まず屋外での見直しをしてもいいのではないか」。今月10日の会見で、東京都医師会の尾崎治夫会長はマスク着用についてこう切り出した。

懸念するのは、長引くマスク着用が子供の成長に及ぼす影響だ。都医師会理事で小児科医の川上一恵氏は「(子供は)喜怒哀楽を相手の表情や言葉を聞くことで覚えていくが、(マスク着用の)影響が5年先、10年先に出てくるのではないか」と不安視。マスクで表情が読み取りづらくなったことでコミュニケーションがうまくいかないためか、「子供がよく泣く」「友達とのけんかが多くなった」といった声が保育・教育現場から聞こえてくるという。

都医師会は熱中症の危険性が高くなる夏場に向け、「ソーシャルディスタンスが保てる屋外ではマスクを外すこと」を提言。具体的場面として、保育所・幼稚園での外遊び、学校の体育や部活動、山や海でのレジャーなどを例示した。

政府も以前から熱中症予防を踏まえ、屋外で他の人と2メートル以上離れている場合にはマスクを外すように注意喚起してきた。都医師会の発言を受け、松野博一官房長官は「気温、湿度が高いときには熱中症のリスクが高くなる。マスクを外すことを推奨している」と説明。一方、マスク着用自体の緩和は「現時点で現実的ではない」と述べ、今後の検討課題としていた。

歓迎や不安

着用の在り方にはメリハリを求める声が根強い。

帝京大大学院の高橋謙造教授(公衆衛生学)は「屋外で周囲と2メートル離れていれば、飛沫(ひまつ)感染は起こり得ない。ただ人混みに入るのであれば、マスクを外すことは避けたい。どういった場面で着用が必要になるのか、国は明確な目安を示していくべきだ」と話す。

一方、国民の受け止めはさまざまだ。ランナーの聖地とされる皇居周辺にいた江東区の男性(54)は「マスクをしていないランナーは確実に増えている。(緩和の動きは)待望ではないか」と指摘。その上で「この辺りは観光客も多い。すれ違うときにはすぐにマスクを着けられるようにするなど、まだ配慮は必要だと思う」と話した。

「コロナにかかることが一番怖い」。そう不安を訴えるのは、自宅近くの公園で毎朝ラジオ体操をしているという70代女性。「夏にかけて屋外でのマスク着用は熱中症のリスクもある。正しい医学的根拠を示してほしい」と要望した。

小学生と幼稚園児の子供2人を連れた40代女性は「2メートル」という距離の判断が子供にはできないとして、「『外ではマスクを外してもいいよ』とはいえない」と困惑した表情。「保護者の間で考え方も違う。その場の雰囲気に合わせるしかない」と話した。

学生の間でも「人目は気になる」との声が目立ち、男子大学生(20)は「マスクは外したくない。コロナにかかると面倒だ」と本音を吐露。一方、一緒にいた友人(21)は「若者は重症化リスクも低い。人通りが少ない場所では外していることもある」と打ち明けた。

同志社大の中谷内(なかやち)一也教授(社会心理学)は「すでに国民の間で習慣化しており、マスクを外すときは人の目が気になるはずだ。外していいのはどんな場面か、勤務先など自分の関わる組織ごとに話し合っていく必要があるのではないか」と強調した。


関連・会話少なければ屋外でマスク不要 尾身氏らが提言

会員限定記事会員サービス詳細