経済的な手段を用いて他国に影響力を行使し、自国の利益につなげる政治的手法を意味する「エコノミック・ステートクラフト」(economic statecraft=ES)への注目が高まっている。主に米国や中国が巧妙に展開しているとされる外交戦略の一つで、11日に成立した経済安全保障推進法もESに基づく他国の脅威から日本経済を守ろうという考え方が念頭にある。米中対立やロシアによるウクライナ侵攻など、国際秩序が大きく揺らぐ中で、ESの重要性は増している。企業もESを念頭に置いた行動がさらに求められる。
■中国の「外圧手段」
ESは「経済外交策」などと訳されることも多い。1980年代中頃の米国で登場したともいわれる。重要度が増した背景には、冷戦終結後に進んだ世界経済のグローバル化がある。国家間の経済依存が増えたことで、国際関係の悪化や他国の輸出規制が自国経済に直接、大きな影響を与えるようになった。これを逆手にとったのがESだ。
従来は軍事的な武力を行使していた国家間の争いが、近年は経済を手段とした〝経済戦争〟に取って代わったともいえる。ウクライナに侵攻したロシアに対する日米欧などの経済制裁もその一例といえる。