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朝晴れエッセー

結婚記念日・5月18日

4月29日は私の結婚記念日だ。「私たちの」ではなく「私の」と表現したのは夫が10年前に他界したからだ。37年前、式場を予約した日がたまたま祝日だったわけだが、この選択が功を奏し必ず結婚記念日は休日になる。そして毎年必ず2人でデートするのが私たちの不文律となっていた。

夫は昭和の男には珍しく記念日を大切にする人だった。私が日々の子育てに追われて忘れていても「今年はどこに行く?」と希望を聞いてくれる優しい人で、子供を預かってくれるよう夫の両親にお願いしてくれることも忘れない気の配りようだった。

10年前の3月、健康オタクだった夫が、自覚症状もないうちに余命宣告され、家族も友人も会社の同僚も本人ですら「噓でしょ」「何かの間違いでしょ」と思っていた。しかし、1カ月後には起き上がるのも困難な体になっていた。最後の結婚記念日に夫は「初めてどこにも出かけない記念日になったな」と悔しそうにしていた。私は「良くなったら行けばいいじゃない」と返事をしたが、その思いはかなわなかった。

夫が亡くなった翌年、結婚記念日は考えないようにしていたが、「今年はどこに行く?」とのセリフが聞こえてきた。振り向くと娘が立っていた。「えっ?」と聞き返すと「毎年どっかへ行っていたでしょ。どこにする?」と当然のように聞いてくる。

まだ娘は20歳の学生だったが、彼女なりに私の心配をしてくれていたのだろう。ありがたく甘えさせていただき、その年から欠かさずに今も娘とお出掛けをしている。優しさは夫に似たのだろう。今年は行き先をこちらからリクエストさせてもらった。


関口さゆり(62) 東京都大田区

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