主張

北コロナ感染拡大 まず軍事挑発停止が先だ

「平壌歯科衛生用品工場」の食堂を消毒する作業員=16日、平壌(共同)
「平壌歯科衛生用品工場」の食堂を消毒する作業員=16日、平壌(共同)

新型コロナウイルスの感染者はいないと主張していた北朝鮮が初めて感染確認を発表し、発熱患者はその後、数日で100万人を超えた。

「感染者ゼロ」と言い張ることができたのは、情報を統制し、国民生活を自在に制限できる強権国家だからだろう。全世界的な感染爆発で中国や韓国と陸続きの北朝鮮が空白域であるはずがなかった。

金正恩朝鮮労働党総書記は「建国以来の大動乱」と表したが、状況は文字通りに深刻なのだろう。最大の犠牲者は「ゼロ」を強弁した末に「大動乱」の渦中に放り出された北朝鮮の国民であり、国家指導者である金総書記の責任は厳しく問われるべきだ。

韓国の尹錫悦大統領は施政方針演説で感染爆発の問題に言及し、「北朝鮮住民に必要な支援を惜しんではならない」と述べた。北朝鮮当局が応じれば、ワクチンや医療器具を提供するとの問いかけだが、過去の人道支援も多くは党幹部や軍を対象にとどまり、住民には届いていないのが実情だ。

だが北朝鮮は、感染確認を発表した12日にも弾道ミサイル3発を発射し、核実験実施の構えも見せるなど、軍事的挑発をエスカレートさせている。

尹大統領は北朝鮮への人道支援について「政治、軍事的考慮なしにいつでも扉は開かれている」とも述べたが、軍事挑発を続ける北朝鮮には支援を受けるつもりも、国民を救済するつもりもないと判断すべきである。

金正恩体制は核・弾道ミサイルだけを拠(よ)り所に米国や日本、韓国を恫喝(どうかつ)し、中露と結託し、強権国家として存在を誇示している。

その結果、国連の厳しい制裁下で困難を強いられているのは常に国民である。「感染者ゼロ」の防疫対策として国境を閉じ、経済は一層悪化した。これ以上の自国民迫害は許されない。

核・ミサイル開発を放棄して軍事挑発を停止する。拉致被害者を解放する。それが国際支援を受けて国民を救う唯一の方法だ。

金総書記は党と行政の防疫担当を叱責し、「中国の先進的で豊富な防疫成果と経験」を学ぶよう指示した。だが中国のゼロコロナ政策も長期の都市封鎖で経済は減速し、住民の不満が高まって行き詰まりを見せている。独裁者のための強権体制でコロナを封じることはできないと知るべきだ。

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