夜間中学に「たどりついた」 苦難を喜びに変えて 

コロナ禍で中止が続いていた近畿夜間中学校生徒会連合会の新入生歓迎集会が3年ぶりに開かれた。夜間中学には年齢も国籍もさまざまな生徒たちが通う=15日、大阪市阿倍野区(須谷友郁撮影)
コロナ禍で中止が続いていた近畿夜間中学校生徒会連合会の新入生歓迎集会が3年ぶりに開かれた。夜間中学には年齢も国籍もさまざまな生徒たちが通う=15日、大阪市阿倍野区(須谷友郁撮影)

全国各地の夜間中学や自主夜間中学で学ぶ生徒らにスポットをあてた連載「夜間中学はいま」が、産経新聞大阪本社発行の朝刊で始まったのは平成31年3月。その続編で、関西の夜間中学各校を紹介する「夜間中学はいま-学び舎の風景-」は昨年7月から夕刊で連載中だ。3年以上にわたって取材を続ける中で、少なからぬ夜間中学生が自然に口にする言葉に気づいた。

「たどりつく」

夜間中学には、戦争や貧困、不登校などさまざまな事情で義務教育を受けられなかった生徒たちが通う。入学の経緯をたずねることは、歩んできた人生に耳を傾けることである。

生徒募集のポスターや自治体の広報紙などで夜間中学を知った人は多い。心にその存在をとどめながら、長い間入学を逡巡する人もまた多い。犬の散歩コースを変更して3年間毎日学校の周囲を歩いた女性がいる。通勤電車の窓から何十年も生徒募集の看板を見続けた男性もいる。「学びたい、でも今さら…」。葛藤の末に勇気を振り絞って、ようやく夜間中学に「たどりついた」生徒たち。その言葉には、長い苦難の道のりと学ぶ喜びが凝縮された重みがある。

連載への反響は大きく、記事が掲載されるたびに読者から手紙やはがき、メールが届く。夜間中学生の姿に学ぶことの意味を考え、勇気をもらったという人が多く、夜間中学への関心の高まりを感じられる。うれしいことに、連載をきっかけに夜間中学に「たどりついた」という人が複数おり、中には産経新聞を握りしめて学校を訪れた入学希望者もいたそうだ。夜間中学を必要とする人はあちこちにいる。ただ埋もれているだけなのだ。

文部科学省が各都道府県、政令市に最低1校の夜間中学開設を促していることもあり、連載を始めた時点では8都府県に31校だったが、現在は15都道府県40校に増えた。今後も各地で開設の動きが続くが、一方で、大阪市では令和6年春に歴史のある市立天王寺、文の里の2つの夜間中学をなくして、新設する不登校特例校に夜間中学を併設する計画がある。

誰もが学齢期に義務教育を受けることができていれば、夜間中学は必要ない存在だ。しかし、現実はそうではない。本来「あってはならない学校」だが、「なくてはならない学校」なのだ。一人でも多くの人が学び舎に「たどりつく」道しるべの一助となることを願い、取材を続けていきたい。 (伐栗恵子)

会員限定記事会員サービス詳細