【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の朝鮮労働党は17日、中枢メンバーによる政治局常務委員会を開き、発熱患者が爆発的に増えている新型コロナウイルス対応について協議した。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は「建国以来初めて直面した防疫試練」だと述べ、初期の政府の危機対応が未熟で弱点と隙を露呈させたと厳しく批判した。朝鮮中央通信が18日に伝えた。
感染が疑われる発熱患者は17日夕までの1日で新たに約23万3000人が確認された。4月末以降の累計は人口の約6・7%に当たる約171万6000人、死者の累計は62人となった。依然、急増が続くが、16日発表の新規患者約39万人に比べて増加ペースが落ち、会議では状況が「好転した」との認識が示された。
18日に放映された映像では金氏以外の出席者全員も途中からマスクを外して会議を進行した。安全性をアピールした形だ。会議や視察で陣頭指揮する金氏の姿を連日報じて危機に立ち向かう指導者像とともに、事態が収束に向かいつつあることを国内外に印象づける狙いとみられる。
金氏は「国家の危機対応能力の未熟さ、国家指導幹部らの消極的な態度や気の緩み」を指摘。「時間が命である防疫対応初期の複雑さや困難さばかりを増大させた」と叱責した。
北朝鮮は国営テレビで、思いのほか症状が軽かったとの住民の証言や「民間療法が一番」との声を伝えており、医薬品が不足する中、住民らの不安払拭に苦心する様子もうかがえる。