社説検証

韓国新政権始動 産経「国と国の約束果たせ」/朝毎東「首脳同士で修復を」

ソウルの国会前で開かれた就任式で宣誓する韓国の尹錫悦新大統領=10日(聯合=共同)
ソウルの国会前で開かれた就任式で宣誓する韓国の尹錫悦新大統領=10日(聯合=共同)

韓国新大統領就任をめぐる主な社説

【産経】

・対日改善策を明確に示せ

【朝日】

・「自由」守護し、前進を

【毎日】

・関係修復し難局に対処を

【読売】

・日米との連携で抑止力向上を

【日経】

・尹氏は世界視野で日韓を語れ

【東京】

・日韓改善へ首脳会談を

(東京は5月12日、他の5紙は11日付)

韓国大統領に日米との関係を重視する尹錫悦氏が就任し、新政権が始動した。5年ぶりの保守政権である。文在寅左派政権の対北融和、親中路線から転換する。尹氏は日韓関係修復にも意欲を示してきたが、大統領としてその姿勢を貫き、実行できるのか。隣国の新政権に期待と不安が表明された。

「韓国の政権交代が内外に前向きな新風を吹き込むよう願う」。新政権発足を歓迎し、大きな期待を込めたのは、朝日である。「大統領執務室はこの日から移転され、権力の象徴だった『青瓦台』は市民に開放された。尹氏が就任演説で何度も繰り返したのは『自由』と『民主主義』の重要性である」と続けた。

毎日は「昨秋の岸田政権発足と併せ、両国とも新しい体制となった。『国交正常化以降で最悪』となった近年の日韓関係の局面打開を図る好機である」と捉え、「日韓が足並みをそろえて(ウクライナ)人道支援や対露制裁などに取り組むことは意義がある」と説いた。

もっとも、尹政権を待ち受ける内外の情勢は険しい。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮は最近も、弾道ミサイルを立て続けに発射し、海洋進出を拡大させる中国は台湾併吞(へいどん)の意図を露(あら)わに、威嚇を強める。ロシアの脅威のすさまじさが、ウクライナ侵略によって改めて示された。東アジアの安全保障環境が極めて厳しいことは、各紙の共通認識である。

産経は「東アジアの平和と安定に向け、今ほど日米韓の連携が必要なときはない。文在寅前政権下では機能しなかっただけに、尹政権にとっては、日米韓の関係強化が外交上喫緊の課題となる」と論じた。その一環として「落ち込んだ日韓関係の正常化が不可欠」であり、尹氏に対日改善策を明確に示すよう求めた。

読売の社説は、日米韓の安全保障分野での連携に的を絞ったもので、「日米との連携強化を通じて、抑止力を向上させるという尹氏の基本路線は、現実的な政策として評価できる」とし、尹氏が北朝鮮抑止のため、先制攻撃能力の整備や在韓米軍のミサイル防衛の追加配備を提唱していることに言及、「前政権下で規模が縮小されてきた米韓合同軍事演習の再強化も検討すべきだろう」と指摘した。

検事出身で政治経験のない尹氏にとって、左派の野党「共に民主党」が多数派を占める国会は難敵だ。対日関係修復を進めるのも容易ではない。尹氏は就任に先駆け、日本に側近や専門家で構成する代表団を派遣した。就任式には、日本から林芳正外相が出席した。尹氏は式典後、林氏と会い、関係修復に「共に協力したい」と語った。朝日や毎日、東京は、日韓首脳会談の早期の実施を提唱する。毎日は「日韓の首脳が率直に話し合う場を早期に設け、関係改善に向けた流れを作るべきだ」と強調した。

首脳会談を行うにしても、重要なのはその先である。慰安婦問題やいわゆる徴用工問題といった日韓間の懸案をいかに解決するかだ。読売は「前向きの動きがあれば日本側も柔軟に応じ、建設的な対話を行うことが望ましい」とし、日経は「日韓の新たな関係をめざす尹氏に岸田政権も建設的な対話で応じるべきだ」と歩み寄りを促した。

産経は、日本側に譲歩の余地はないとのスタンスで一貫している。慰安婦問題は2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」をみており、「徴用工」とかかわる賠償問題は1965年の国交正常化に伴う協定で、個人補償も含め解決済みだからだ。「肝に銘じるべきは、悪化した日韓関係の原因がひとえに韓国側にあることだ。韓国は『国と国との約束を守る』という当たり前のことを実行しなければならない」と主張した。

当面は、近く予定されるバイデン米大統領の訪韓、訪日で、日米韓、日韓関係をめぐりどんなメッセージが発せられるか注目したい。(内畠嗣雅)

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