スポーツドリンクのラベルと同じ水色と白に塗り分けられた路面電車を、高校の制服を着た女優の綾瀬はるかさんが全力で追いかける。そんなCMを覚えているだろうか。路面電車ファン騒然のCMだが、綾瀬さんと共演したのが高知の「とさでん交通軌道線」。路線の総延長が全国一長く、市街地から水田や港、峠越えと、さまざまな車窓の風景が自慢の電車だ。
東西と南北の線路がクロスする「はりまや橋」で待っていると、なぜか「ごめん」と謝る行き先板を掲げた電車が来た。謝っているわけでも、誤ったのでもない。東方面の終点、後免町(ごめんまち)(南国(こく)市)行きなのだ。
乗車すると、車窓の風景は市街地から住宅地に街並みを変えていく。小気味よく停留所を過ぎる。「清和学園前」から「一条橋」はわずか63メートルで、この短さは全国一という。降車ボタンを押さないと電車が止まらないので、気をつけたい。
車窓一面に田んぼが広がるエリアに入った。南国・土佐は早場米の生産地。4月中には田植えが終わっている。「この季節、田んぼに水が張られると窓から涼しい風が入ってきます。気持ちいいですよ」と運転士、中野優梨子(ゆりこ)さん(24)は話してくれた。
今回は東へ行ったが、西方面の伊野線は狭い単線区間や峠越えがあり、南方面の桟橋線は港の雰囲気を楽しめる。とても1日では回り切れないのが悩ましい。(写真報道局 永田直也)