がんは現在、日本人の寿命に最も大きな影響を持つ病気です。寿命だけでなく、罹(かか)った後の生活の質(QOL)も左右します。そもそもがんは、遺伝子の変化が原因で発生する病気です。
ヒトには2万2千個ほどの遺伝子があります。今年3月末に、「ヒトゲノム解析の完全解読終了」とのニュースがでました。ゲノム(genome)とは、ヒトや動物が持つ遺伝子(gene)全体を表す言葉です。従って、ヒトゲノムは、ヒトの設計図のようなものです。生涯のどこかで、私たちのゲノムに複数の変化(変異)が起き、発生する病気の一つが「がん」です。
38歳の女性が、卵巣がんの肺転移で「がんゲノム医療」を希望し、受診しました。2年前、おなかが張り、近くの総合病院の婦人科で精密検査と手術を受けて、卵巣がんで肺転移があるといわれました。おなかの手術の後、標準の抗がん剤治療を受けましたが、効果がなく、その次の薬も効きません。
そこで「がんゲノムプロファイリング検査」といって、一度にがんに関係する遺伝子100個以上を調べる検査を受けました。その結果、「AKT」という遺伝子に、がんの進行に関連する変異が見つかりました。