主張

コロナ対策の強化 司令塔への権限集中を 病床確保は強制力伴う措置で

2年以上に及ぶ新型コロナウイルス感染症対策を検証し、見直すべき点を洗い出す政府の有識者会議(座長・永井良三自治医科大学長)が議論を始めた。政府は有識者会議の提言を踏まえて、感染症対策を抜本的に強化する。

日本は欧米諸国と比べて新規感染者数が相対的に少なかったにもかかわらず、PCR検査の大幅増に及び腰になったり、ワクチン対策で後れを取ったりして病床逼(ひっ)迫(ぱく)などの深刻な状況を招いた。

これを改めるには、感染症拡大が国家の重大な危機を招くという認識を共有し、有事対応を再構築しなくてはならない。足元のコロナ禍だけでなく、将来起こり得る感染症にも効果的に対応できるよう万全の議論を求めたい。

厚労省益に付き合うな

大きな論点は司令塔機能の強化である。岸田文雄首相は昨年の自民党総裁選の公約で健康危機管理庁の創設を掲げていたが、首相就任後は「司令塔機能の強化」と表現を後退させている。

これが、権限を奪われかねないことに危機感を抱いた厚生労働省の声を意識したためだとすれば本末転倒である。

司令塔機能の強化は、厚労省主導のコロナ対策がうまく機能しなかった反省を踏まえて検討すべきことだ。厚労省の省益に付き合う必要は全くない。

令和2年1月に国内で感染が確認されて以降、歴代の政権は緊急事態宣言の発令や人流抑制、病床確保、水際対策などの政策決定で軒並み対応が遅れた。新型コロナ対策担当相や厚労相、官房長官ら関係閣僚の場当たり的な対応も目についた。

これは、感染症を公衆衛生上の問題という平時の次元でしか捉えなかったためではないのか。

例えば米国では、国境を越えて広がる感染症は人類の脅威という認識が強い。細菌やウイルスで製造した生物兵器テロへの対応など国防の観点からも、感染症への問題意識は極めて高い。日本との差は歴然としている。

少なくとも厚労省任せではコロナ禍のような重大な危機に対応しきれまい。閣内に新型コロナ担当相がいても、実務を担うコロナ対策推進室長は初代から現在の3代目まで全員、厚労官僚である。

国民の命と健康を守るのは厚労省だけではない。その点を踏まえた上で省庁の縦割りを排し、病床確保や行動制限などの対策を一元的に講じる首相直轄の司令塔に権限を集中すべきだ。感染症は国家安全保障上の危機管理の問題であるという認識を政府全体で共有することが肝要である。

有識者会議が議論すべき、もう一つの大きな論点が医療提供体制の強化である。

昨夏の第5波では全国的に病床が逼迫し、入院できずに自宅で死亡するケースが相次いだ。新型コロナ病床と申告して補助金を受け取りながら、実際には患者を受け入れていない「幽霊病床」の存在も問題となった。こうした実情を抜本的に改善できるかである。

日医にも協力を求めよ

例えば昨年の感染症法改正により、病床確保の要請を拒否した場合は勧告をし、従わない病院名を公表できるようになったが、実効性を伴っているとは言い難い。

日本の医療機関の約8割は民間病院であり、拘束力のある措置は取りづらいという指摘もある。しかし、感染症の有事においては毅然(きぜん)と対応する必要がある。国や都道府県に強い権限を与え、病床と医療人材の双方を十分に確保できるよう、強制力を伴う仕組みを導入すべきである。

もともと病院名公表に批判的だった日本医師会などは、国や都道府県の強制力を高めることに反発する可能性もあろう。だが、コロナ以外の一般診療への影響に配慮することなどで理解を得たい。

日医は自民党の有力支持団体である。だからといって、岸田政権が今夏の参院選を念頭に置き、日医におもねるようなことがあってはならない。思い切った改革に踏み切ることが大切だ。

感染症法上の位置付けの変更についても、そろそろ結論を出すときだ。重症化率が低いオミクロン株が主流である限り、上から2番目の危険度である「2類」相当とし続けるのは無理がある。季節性インフルエンザと同じ「5類」相当への引き下げなどによって社会経済活動との両立を図れるよう具体的な方策を考えるべきだ。

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