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シェルター整備は首相の務めだ 論説副委員長・榊原智

施政方針演説を行う岸田文雄首相=1月17日午後、衆院本会議場(矢島康弘撮影)
施政方針演説を行う岸田文雄首相=1月17日午後、衆院本会議場(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相は今年1月の施政方針演説で「政府一丸となって、(略)国民の生命と財産を守り抜いていきます」と語った。

また、核廃絶・軍縮の推進は首相のライフワークだという。核の脅威から国民を守りたいという思いが本当なら幸いだ。

首相の言葉の真偽を示すリトマス試験紙となる政策がある。核・非核を問わずミサイル攻撃から国民を守る「反撃能力」導入とシェルター(避難所)整備の推進だ。

ウクライナを侵略するロシア軍は、弾道・巡航ミサイル攻撃や砲撃で鉄筋コンクリート製を含む建物を次々に破壊している。

多くのウクライナ国民は地下室や地下鉄構内へ避難した。旧ソ連に属していたウクライナの地下鉄は核攻撃に備えて深くつくられている。独ソ戦の戦場となった教訓から地下室を持つ建物は多い。地下のシェルターがなければ、死傷者はさらに増えていただろう。

戦後日本は武力攻撃から国民を保護するシェルターをほとんど整備してこなかった。これほど国民の命を軽んじる先進国は珍しい。政府、与野党が押し頂いてきた専守防衛の欺瞞(ぎまん)性がよく分かる。

「シェルターとは」でインターネット検索すると、内閣府男女共同参画局の「民間シェルター」の項目がまず出てくる。暴力(DV)からの女性や子供の避難場所のことだ。もちろん大切な施設だが、侵略から国民を守るシェルターの準備も重要だろう。

広島への原爆投下の際、爆心地からわずか170メートルにあったコンクリート製建物の地下1階書庫にいた当時47歳の男性が、すさまじい爆風や熱線、初期放射線から遮断され、ほぼ無傷で脱出した。放射線の急性障害で苦しんだが回復し、84歳の長命を保った。

自民党は、安全保障に関する政府への提言で、核攻撃などから国民を守るため「既存の地下施設等を中心に、(略)シェルター整備について調査・評価の上、整備を行う」よう求めた。首相はこれを作文で終わらせてはいけない。

平成16年施行の国民保護法は自治体にシェルター指定を義務付けるが、その動きは遅々としている。首相と総務省消防庁、自治体はまず、都市部の既存地下施設を広くシェルターと位置付け、周知徹底を急ぐべきだ。ミサイルなどの警報の際、最寄りのシェルター施設が分かるアプリも整えたい。台湾はすでにそうしている。

空襲警報が発令され、シェルターに避難した欧州連合(EU)のミシェル大統領(左)とウクライナのシュミハリ首相=9日、ウクライナ・オデッサ(EU提供・ロイター)
空襲警報が発令され、シェルターに避難した欧州連合(EU)のミシェル大統領(左)とウクライナのシュミハリ首相=9日、ウクライナ・オデッサ(EU提供・ロイター)

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