朝晴れエッセー

ツバメの駅・5月16日

車通勤をしていた会社を辞め、この春から新しい仕事を始めました。今回は電車通勤です。朝夕、最寄り駅の改札を通り、久しぶりの電車通勤も楽しみです。

春になるとこの時期、駅のまわりをツバメが飛び交い、改札を出たところの天井下の壁に以前からある巣を使い、卵を産み、ひながかえり、成長し、巣立っていく。毎年の光景でした。ひなが親鳥から餌をもらうときに、一斉に大きな口をあけてピーピー鳴くのを見るのが楽しみでした。

ところが私が車通勤をしている間に、いつからかこの駅は無人駅になり、ツバメの巣もいつの間にかなくなっていました。無人駅になるときに撤去したのでしょうか。

なぜかさみしい気持ちでおりましたが、先日、帰りに改札を出ると、ツバメが目の前を飛び、以前巣があった壁にとまりました。その場所で巣づくりを始めるのでしょう。その後、巣の土台ができ、だんだんと形になっていきます。

今年は一からの巣づくり。私が駅を通るのは朝夕だけですが、ツバメはおそらく一日中、材料を運んで巣をつくっているのでしょう。

何ともやるせない昨今の人間の世界をよそに、ツバメはせっせと自分たちのために働いています。争うこともなく。

ツバメにとっての始発駅。うまく発車してほしいと思っています。頑張れ。


西尾祐二(63) 奈良県平群町

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