【ニューヨーク=平田雄介】米ニューヨーク州北部バファローのスーパーで白人の18歳の男が銃を乱射し、黒人ら10人を死亡させた事件で、捜査当局は15日、第1級殺人罪で訴追した男の同州中部コンクリンの自宅を捜索した。AP通信によると、男は人種差別に基づく憎悪犯罪(ヘイトクライム)とされる過去の乱射事件を詳細に調べていた。白人至上主義者への警戒が改めて米社会で高まった。
バイデン大統領は事件を受けて14日夜に発表した声明で、動機の解明を待つ姿勢を示しながらも、「忌まわしい白人至上主義の名の下に行われる、いかなる犯罪も米国の理念に反する」と述べた。
米メディアによると、男が公表したとされる180ページの書面では、名前と生年月日に加え「私は白人至上主義者だ。白人の頭脳はほかの人種より優れている」と書かれていた。有色人種の人口が増えることで、白人を中心としてきた米社会で「人種の置き換え」が進むと唱え、多様性を重視する人たちを敵視していた。
白人至上主義者の間では、白人が他の人種より優れているという従来の偏見に加え、有色人種が増加し「白人が絶滅するかもしれない」との考えに基づく憎悪が広がっているという。
男と同じように、カメラを身につけ、ニュージーランドのモスク(イスラム教礼拝所)を2019年に襲撃する様子をネットで中継した男も、犯行声明とみられる文書で同様の「置き換え理論」を主張していた。
米国でも19年にテキサス州エルパソで22人を殺害した男がネットに投稿したとみられる書面に、人口増加が顕著なヒスパニック(中南米)系の「侵略」に対する攻撃だと記されていた。
18年にペンシルベニア州のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で11人が殺害された事件の容疑者は、ユダヤ人組織が援助する難民を「侵略者」と呼んでいた。