京都で加藤文彦さん写真展 妻亡くし再生の一歩

京都で5年ぶりの個展を行う加藤文彦さん
京都で5年ぶりの個展を行う加藤文彦さん

英国王立写真協会会員で、欧州の廃虚や仏教寺院の石仏の美などを追い求める写真作家の加藤文彦さん(74)は10年前まで京都女子大学教授として英米文学などを教えてきた経歴を持つ。その加藤さんが今月、京都市内で5年ぶりの写真展を行う。それは2年前に愛妻を亡くした加藤さんの再生の一歩でもある。

1986年、フランスで最も美しい廃虚といわれるセーヌ河畔(かはん)のジュミエージュ修道院を訪れ、魅了されたのがきっかけで写真撮影を始めた。以来、欧州のロマネスク建築とその廃虚やゴシックのキリスト教的な建物などを対象に撮影を続けた。そうした作品を集め「石の叫び」「石の歓び」などのタイトルで2014年から個展を開いていたが、2年前に闘病を続けていた妻の洋子さんを71歳で失って以来「家内を救ってやれなかった」という自責の念にとらわれてきた。

「自分のことは早く忘れて楽しく生きてほしい」という洋子さんの言葉は胸にしみたが、しかし朝起きて夜眠るまで1年以上、後悔にしばられてきたそうだ。

「ですが、昨年11月に『機材を持つから』という息子と長崎の五島列島などに行ったり、古い教会で1、2カット撮ったりするうちに、少しずつ薄れてきたのです」と加藤さん。さらに、心配してくれた知人が個展をやってみないか、と声をかけてくれたおかげで、「おぼれる者はわらをもつかむ」心境で個展開催にふたつ返事したのだそうだ。

加藤文彦「囚われて」(英国・ウェルズ大聖堂)
加藤文彦「囚われて」(英国・ウェルズ大聖堂)

今回の個展は「それでも、なお」というタイトルで、「石の建造物だけではなく、私の好きなものを集めた」展示だという。イタリア・アルノ川の夕景色や兵庫県丹波市の円通寺の石仏から安藤忠雄氏が設計した大阪府河南町の府立近つ飛鳥博物館まで、モノクロ、カラーあわせて約30点が並ぶ。

加藤文彦写真展「それでも、なお」は5月17日から29日まで、京都市東山区堀池町の京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスクで。問い合わせは、080・5988・7720。

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