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優先すべきは、地上波での生中継

優勝を決め、喜ぶINAC神戸の選手ら=相模原ギオンスタジアム(撮影・蔵賢斗)
優勝を決め、喜ぶINAC神戸の選手ら=相模原ギオンスタジアム(撮影・蔵賢斗)

野球やサッカー、オリンピックなどの試合開始時間と、テレビ中継の関係について考えてみたい。試合のスケジュールが先に固定されており、進行に合わせてテレビ中継が決まるのが昔からのパターン。高校野球をはじめとしたアマチュアスポーツの多くは、この形である。

だが、「興行」の側面を持つプロや、世界的なイベントであるオリンピックは異なる。選手のパフォーマンスを多少犠牲にしてでも、テレビ中継ありきで試合の開始時間が組まれる方が一般的だ(なので、時折「選手ファーストになっていない」といった批判が巻き起こる)。

オリンピックが最も分かりやすい。昨夏の東京五輪を例にとると、多額の放映権料を支払った米大手放送局の意向に沿う形で、米国で人気の高いバスケットボール男子や競泳の決勝は「米国のゴールデンタイム=日本の午前中」に試合がスタートした。選手たちのコンディショニングは大変だっただろう。

この放映権を重視して日程調整を行う傾向は近年、一部のアマチュアスポーツにも広まり、ますます顕著になっている。だが、まったく別な意図で、テレビ中継を優先して試合開始時間を決めた例がある。

サッカー女子プロ「WEリーグ」初代女王のINAC神戸である。14日に東京・国立競技場で行う三菱重工浦和戦の開始時間を地元サンテレビの生中継に合わせ、午後4時キックオフとした。

同試合は有料映像配信サービス「DAZN(ダゾーン)」でも生中継されるが、地上波で多くの人に見てほしいとの思いからサンテレビと交渉し、午後4時からの枠を得た。解説者も自前で用意し、INAC神戸のテクニカルアドバイザーに就任した元韓国代表の朴康造さんと、スクールコーチで元女子日本代表の大竹七未さんが務める。

根底には、女子サッカーを盛り上げたいとの思いがある。多くの人に見てもらうため、地上波で生中継してもらえる時間に合わせて試合時間を変える。この発想は、他のプロスポーツも持っていい。(信)

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