サッカー通信

得点力不足に苦しむ名古屋 求められるマテウス依存からの脱却

鹿島戦で競り合う名古屋のマテウス(右)。今季3ゴールの活躍だが…=カシマ
鹿島戦で競り合う名古屋のマテウス(右)。今季3ゴールの活躍だが…=カシマ

サッカーJ1の名古屋が苦しんでいる。長谷川健太新監督を迎えて飛躍を目指した今季、12試合を終えて勝ち点11の暫定15位と低迷。原因はFWマテウスの個人能力に依存し、ほかにゴールを期待させる攻撃パターンが乏しいことにある。「FW登録の選手が点を取れなくては苦しいので奮起してもらいたい」とマテウス以外のアタッカー陣に期待する長谷川監督の苦悩が続いている。

名古屋はリーグ戦で2020年が3位、21年が5位と安定した成績を残してきた。21年にはYBCルヴァン・カップも制した強さを支えたのは堅守で20年の28失点はリーグ最少、21年の30失点はリーグ2番目に少なかった。長谷川監督招聘の狙いは攻撃力アップにあったが、今季の総得点はリーグ3番目に少ない10で、複数得点を挙げたのは勝利した2試合だけとなっている。

チーム得点王は3ゴールのマテウスで、マテウス以外のFW登録選手は誰も得点を奪えていない。7日の横浜M戦を1-2で落として連続未勝利は6試合に伸び、長谷川監督は「FWが点を取らないと勝てない。DFラインは頑張ってくれているので、前線の選手がいかに点を取れるか」とぼやいた。

もっともな指摘ではあるが、組織としても問題を抱えている。名古屋の攻撃はマテウスへの依存度が高い。突破力があって左足からのキックも強烈なエースが目立つのは当然にしても、効果的な攻撃の多くがマテウス絡みになってしまっては相手守備陣も的を絞りやすい。マテウスにマークが集中することでフリーになるチームメートを活用した攻撃オプションを探る必要がある。

マテウスはプレースキックも抜群にうまく、CKや敵陣深くでのFKは即ビッグチャンスとなる。横浜M戦のゴールもマテウスのCKから生まれている。敵陣でのセットプレーという既存の武器をいかしつつ、指揮官が「流れの中でも点を取らないといけない」と自覚するように攻撃の幅を広げたい。

FW登録選手に人材を欠いているわけではない。日本代表経験者で実績十分の金崎や柿谷、斎藤のほかにも、昨季に鳥栖で自己最多の8得点を挙げた酒井らもいる。3バックを採用している現状ではウイングバックに入ることが多い相馬も、昨年の東京五輪代表でスピードある突破が魅力のアタッカーだ。

マテウスを攻撃の軸に据えることでできるスペースをチームメートがいかす攻撃パターンを作る。相手守備陣のマークが分散すれば、マテウスが個人能力をより発揮できるスペースも生まれる。「今の順位にいるようなチームではない」。長谷川監督が認識するようにMFやDF、GKの各ポジションにも実力者をそろえているだけに、マテウス依存から脱却する方策を探り出したい。(運動部 奥山次郎)

会員限定記事会員サービス詳細